台湾法における「営業秘密」について

先日のメディアによる報道によれば、鴻海グループの子会社の一つ(以下「A社」という)の主管者およびエンジニア計48名がライバル社である中国のB社に転職したところ、鴻海グループの董事長が、当該48名の元従業員に対しA社の営業秘密の漏えいに関する法的責任を追及する旨の内容証明郵便を出したとされている。

この事件は企業における営業秘密の重要性を顕著に示している。

「営業秘密」については、営業秘密法第2条には以下の通り明確に規定されている。

本法における営業秘密とは、方法、技術、製造工程、配合、プログラム、設計又は生産、販売若しくは経営に用いることができるその他の情報であって、以下の要件に該当するものを指す。

  1. 当該情報に通常関わる人が知っているものではない。
  2. その秘密性により、実際の又は潜在的な経済的価値を有する。
  3. 所有者がすでに合理的な秘密保持措置を採っている。

従業員が会社の営業秘密を漏えいした場合、民事上の損害賠償責任が発生するほか、刑事責任が発生することもある。

営業秘密法第13条の1第1項には以下の通り規定されている。
意図的に自己若しくは第三者の不法な利益のために、又は営業秘密の所有者の利益を損ねて、以下の事由のいずれかに該当する場合、5年以下の懲役又は拘留に処するものとし、100万台湾元以上1000万台湾元以下の罰金を併科することができる。

  1. 窃盗、不法占有、詐術、脅迫、無断複製又はその他の不正な方法により営業秘密を取得し、又は取得後、さらに使用、漏えいした場合。
  2. 営業秘密を知っており又は保有しており、授権を経ずに又は授権の範囲を超えて当該営業秘密を複製、使用又は漏えいした場合。
  3. 営業秘密を保有しており、営業秘密の所有者から削除、廃棄しなければならない旨を告知されたが、営業秘密を削除、廃棄せず又は隠匿した場合。
  4. 他者が知っている又は保有する営業秘密が前3号に定める事由に該当することを明らかに知りながら取得、使用又は漏えいした場合。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修