第21回 大麻関連法規制について

 近時、世界的に大麻関連ビジネス(CBDビジネス、医療大麻など)に対する注目が高まっているが、大麻関連の日本の法規制には問題点が多い。
これに関しては、現在規制の見直しが進められており、今後是正される可能性があるが、以下では本稿作成時点の現行法を前提とする。

 大麻取締法の規制対象である「大麻」は、同法1条で、「この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」と定義されており、成熟した茎及び種子は、その製品(成熟した茎の樹脂は除く。)を含め、規制対象外とされている(「部位規制」)。

 他方で、厚労省や税関は、大麻草に含まれる陶酔成分であるテトラヒドロカンナビノール(「THC」)の含有に基づき大麻製品を規制している実態がある(厚労省のウェブサイトでは国内での販売後にTHCが検出されたCBD製品が公表されている。)。
 
 ここで、大麻製品は、少なくとも理論上、以下の①~④に分けることができるが、このうち、大麻取締法上に明示された規制対象は①②のみであるのに対し、事実上の規制対象には③が含まれている可能性がある。

 ① 規制部位に由来し、THCを含む。
 ② 規制部位に由来し、THCを含まない。
 ③ 規制部位に由来せず、THCを含む。
 ④ 規制部位に由来せず、THCを含まない。

 THCは少なくとも7種の異性体が存在し、いずれも、麻薬及び向精神薬取締法及び関連政令により麻薬に指定されているが、大麻草における含有が特に問題となるTHC異性体2種(Δ8-THC及びΔ9-THC)については、大麻草及びその製品に含有されている当該THC異性体を精製するために必要なものは除外されており、化学合成由来の製品のみが規制対象となっている。

 従って、③を規制対象に含めることは法令上の明確な根拠がなく、罪刑法定主義の見地から正当性に疑問がある。

 ただそうはいっても、実務上は上記実態を踏まえた対応をせざるを得ないので、現状では、日本で大麻ビジネスを行う場合、関係者の処罰や製品のリコール等の不利益を受けるリスクを避けたいのであれば、④に該当することが確実な大麻製品のみを取り扱うことが合理的な対応ということになるが、そのような対応の徹底は現実的には困難であることが少なくないと考えられる。

 なお、CBD製品の輸入に際して、輸入者の提出資料に基づき厚労省が大麻取締法上の「大麻」に該当するか否かにつき回答するという運用が実施されているが、厚労省が「大麻に該当しない」と回答した場合でも、後日のTHCの検出等の事情により「大麻」に該当すると判断される可能性は残存するので、上記リスクはゼロにはならない。

 さらに、CBD製品については、薬機法による規制も問題となり得るのであり、その一例として食薬区分の問題がある。
 すなわち、厚労省の定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に掲載された成分を1種でも原材料として使用したものは薬機法上の「医薬品」として厳格な規制を受けることとなっている。現在のところ、CBDは当該リストに掲載されていないが、今後、厚労省の通知によりリストに追加される可能性がないとはいえず、仮に追加された場合には、医薬品以外のCBD製品の国内における取扱いは大幅に制限されるリスクがある。

 日本で大麻ビジネスを行う場合には、上記のような各種規制やその実態の改正・変更の動向に十分注意する必要がある。


*本記事は、法律に関連する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者

弁護士 池上 慶