第260回 裕隆日産の不実広告に過料処分

公平交易委員会(公平会、公取委に相当)は10月17日、裕隆日産汽車股份有限公司(以下、裕隆日産)に対し、100万台湾元(約370万円)の過料処分を決定しました。その理由は以下の通りです。

裕隆日産は「INFINITI Q50」シリーズの2018年モデルの販売に当たり、「世界三大安全評価認証」、「IIHS(米国道路安全保険協会)トップセーフティピック・プラス」、「NHTSA(米運輸省高速道路交通安全局)五つ星最高安全防備」および「Euro NCAP(欧州新車アセスメントプログラム)五つ星最高安全防備」などの文言を宣伝に使用しました。

しかし、公平会の調べによると、実際には18年度はIIHSなど上記認証を取得しておらず、14年と15年にそれぞれIIHSトップセーフティピック・プラス、NHTSA五つ星認証を取得し、13年にEuro NCAP五つ星認証を取得していただけでした。

過去の認証を新車種の宣伝に使用するのは不実広告に当たり、公正交易法21条第1項の「事業者は商品、または広告、またはその他の公衆に知得させる方法により、商品と関連して取引決定に影響を及ぼすに足る事項について、虚偽不実、誤認を招く表示、または表徴をなしてはならない」との規定に違反するため、同法第42条によって5万元以上2,500万元以下の過料が科せられます。

広告の文言規制に注意を

上記宣伝内容は事実と合致しておらず、当該関連商品の品質に対し、一般市民に誤った認知または決定をさせる恐れが十分にあり、また、不正競争の効果を生じさせ、市場競争メカニズムの本来機能の喪失を引き起こすのに十分であり、公正取引法第21条第1項の規定に違反しています。

台湾当局は消費者保護を目的に、広告で使用する文言への規制を強めており、虚偽不実、または誤認をもたらす恐れはいかなるものでも許されないため、広告作成に当たっては、現地の弁護士に相談して処罰リスクを軽減することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。