第261回 文書偽造と会社登記の抹消

2018年8月1日に公布された改正会社法が、11月1日から施行されました。改正前の会社法第9条第4項では、「会社の設立またはその他の登記事項において文書の偽造、変造があった場合、裁判確定後、検察機関は中央主管機関にその登記を取り消しまたは抹消するよう通知する」旨が規定されていました。

しかし、改正前の会社法第9条第4項に規定されていた「文書の偽造、変造があった」には、刑法第210条から第212条に規定される文書偽造・変造罪(作成権限のない者が虚偽の文書を作成する罪など)のほか、刑法第213条から第215条に規定される不実記載罪(明らかに不実の事項であると知りながら、公務員をして、公文書に事実でない記載をさせる罪など)や、刑法第217条から第219条に規定される印章・印文偽造罪(印章を偽造する罪など)が含まれるのかについて争いがあり、会社法第9条第4項の規定には、不実記載罪や印章・印文偽造罪は含まれないと判断した判例もありました(最高行政法院102年判字270号判決)。

そこで、今回の改正では、「文書の偽造、変造があった」との文言が、「刑法の文書印文偽造罪の章の罪を犯した」と修正され、刑法第15章(第210条から第220条)に規定される罪が全てこれに含まれることが明確化されました。

文書偽造等の主体を明確化

また、改正前の規定では、文書偽造等の主体が不明確でしたが、今回の会社法第9条第4項改正により、その主体が、「会社責任者、代理人、被用者またはその他の従業員」であると明確化されました。

さらに、改正前の規定では、中央主管機関は、検察機関からの通知後にはじめて会社登記を取り消しまたは抹消できるとされていました。しかし、刑法の文書印文偽造罪の章に規定される犯罪行為について裁判所の有罪判決が確定していることから、検察機関の通知を待たずして中央主管機関が直ちに会社登記を取り消しまたは抹消できるようにするため、検察官の通知に係る部分は削除されました。そして、改正後は、中央主管機関は、職権または利害関係人の申請により会社登記を取り消しまたは抹消するとされました。


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執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。