第264回 大法廷制度の新設について

2018年12月7日、裁判所組織法および行政裁判所組織法の一部改正案が立法院で最終可決(三読)されました(公布の6カ月後に施行されます)。

従来の制度では、判例を変更する必要があると認められる場合には、各部門(民事事件であれば、最高裁判所民事法廷)に属する全裁判官によって構成される会議での決議により、法律上の見解が示されてきました。しかし、この制度は、個別具体的な事件から離れて意見を表明するもので、審判権に基づくものではありません。そこで、審判権の範囲内で見解の統一を図れるようにするため、終審裁判所である最高裁民事法廷、最高裁刑事法廷および最高行政裁判所に大法廷制度が新設されることになりました。最高裁民事法廷および刑事法廷の大法廷はそれぞれ11人、最高行政裁の大法廷は9人で構成されます。

各法廷から大法廷への提案は、以下の二つの類型に分けることができます。

(1)差異提案:審理をしている法廷は、案件の評議をした後、裁判の基礎として採用する法的見解と最高裁の先例とが一致しない場合に、他の各法廷に意見聴取を経た後、なお見解に差異があれば、当該法的争点を大法廷に提案し、見解を統一する義務があります。

(2)原則的重要性提案:審理をしている法廷は、案件の評議をした後、裁判の基礎として採用する法的見解に原則的重要性(①法律の規定がなく、または遺漏している場合に、裁判官が個別の案件での法律適用を探ることを促す価値を備えている場合、または②新興、重大、かつ普遍性のある法律問題で、即時、事前に統一見解が必要である場合)がある場合、当該法的争点を大法廷に提案することができます。

当事者の手続き参与権

当事者も、事件の審理期間中、裁判結果に影響するに足る法的見解が、先例の法的見解と一致しない場合、事件を受理した法廷に対し、当該争点を大法廷に提案するよう申請できます。

また、大法廷での審理は口頭弁論(裁判官の面前で意見や主張を述べること)の方式で行われ、当事者は弁護士を通じて(当事者は、訴訟代理人に委任する義務があります)、事実上・法律上の意見を詳述することができます。

なお、大法廷の判断は、中間判決(審理の途中で、最終的な判決の前提となる争点について下される判決)としての性質を有しており、大法廷に争点を提案した法廷は、当該争点に関する大法廷の判断に拘束され、大法廷の法的見解を基礎として、最終的な判決を下す必要があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。