第275回 台湾への短期出張に就労許可は必要か

ある日本企業が、台湾企業と業務提携契約を締結。日本人従業員を年3回、各10日間程度、台湾へ派遣して提携先の台湾企業に技術支援を提供する予定です。その際、就労許可は必要でしょうか。

就労許可が原則必要

外国人が台湾で就労するには、原則として就労許可が必要です。「就業サービス法」第43条に、「本法に別段の定めがある場合を除き、外国人は雇用主が申請して許可を受けていないときには、中華民国国内において労働を行ってはならない」と規定されています。外国人が台湾で従事できる業務は、第46条に列挙されており、日本企業が申請するのはほとんどの場合、第1項第1、2号の「専門的または技術的な業務」、「華僑または外国人が政府の認可を得て投資または設立する事業者の主管」(以下「専門業務」という)です。

就労許可は、基本的に日本企業の台湾拠点(支店または駐在事務所など)が申請します。拠点がない場合は、提携先の台湾企業が申請します。第51条第3項の「外国法人が、請負、売買、技術提携などの契約履行の必要上、外国人を派遣して台湾国内で契約範囲内の専門業務に従事させなければならない場合、契約締結先が許可を申請するものとする」が適用されます。

滞在30日以下は申請不要

なお、滞在30日以下の場合、就労許可は不要と解されています。「雇用主による外国人雇用の許可および管理規則」第5条第1項第1号には、「外国人が就業サービス法第51条第3項に規定する業務に従事する場合、その滞在期間が30日以下の入国ビザまたは入国許可は就労許可とみなす」と規定されているためです。この場合も、契約範囲内の業務のみ行うことができ、その他の業務を行うことはできません。

よって、本件の場合、日本企業の日本人従業員が年3回、各10日間程度、台湾に滞在して業務に従事する予定のため、「入国許可は就労許可とみなす」という規定が適用でき、就労許可は不要と解されます。ただし、この優遇措置は専門業務への従事に限られます。また、滞在が31日以上の場合は就労許可の申請が必要となり、90日以下と91日以上で申請書類が異なりますので、ご留意ください。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。