第281回 会社設立に額面10元の株式発行が必要か

台湾では多くの会社が1株当たり10台湾元(約36円)の株式を発行しているため、台湾で会社を設立する場合は、額面が10元の株式を発行しなければならないと誤解されることがよくある。この問題について、次の二つの部分に分けて説明する。

株式発行は必須か?

以前、会社法第161条の1で、資本額が経済部の定める一定の金額以上の場合、すなわち払込資本額が5億元以上の株式会社は株式を発行しなければならない、5億元に達しない場合は必ずしも株式を発行する必要がないと規定されていた。この規定により株式の発行を望まない非公開発行会社までもが強制的な株式の発行の対象とされていた。

2018年11月1日の新会社法の施行後、当該規定は「株式を公開発行する会社は、設立登記または新株発行の変更登記後の3カ月以内に株式を発行しなければならない」と改訂されている。従って、公開発行するつもりがない場合、必ずしも株式を発行する必要はない。

額面10元に統一か?

かつて台湾では、株式の額面価格を一律10元に統一されていた時代があった。しかし、14年1月1日以降、企業は株式発行時の額面金額を自ら決定できるようになった。18年11月1日の新会社法の施行後は、非公開発行会社は無額面株式を発行することができるようになった。

よって現在、額面10元の強制はなく、公開発行するつもりがない場合は、自ら額面を決めることができ、額面を設定しなくてもよい。

株式発行の実益について

株式を発行することの実益の一つに、株主が株式を譲渡するに当たり、税金を低くできることがある。株式譲渡時、台湾の証券取引税は取引金額の1000分の3であるが、株式を発行していない場合において、会社の「出資額」を譲渡するときは、「一般財産取引」に該当するので、利益額に応じた所得税を納めなければならず、外国法人の場合、一般に20%の所得税率が適用される。

額面を10元とする政策は長年執行されており、大衆になじんでいるため、特別な必要がない場合は、大部分の会社は依然として1株10元を選択している。

台湾の新設会社の株式の発行については、新会社法に基づきさまざまなパターンがあるため、各会社のニーズに合わせ、事前に現地の会計士または弁護士に相談することをお薦めする。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。