第283回 刑法の大幅改正について

台湾の立法院(国会)は2019年5月初旬、刑法改正案を本会議で最終可決しました。今回の改正は最近20年で最も大幅なものと言えます。

今回の刑法改正で改正された条文(以下「新法」)のポイントは以下の通りです:

公訴時効を廃止

1.「虐待」の定義を「暴行、脅迫またはその他の人道に反する方法により、他者に対して侮辱・虐待を行う行為」と定める(新法第10条)。

2.犯した罪に対する最も重い本刑を死刑、無期懲役または10年以上の有期懲役とし、また死亡の結果が生じた場合、公訴権の時効の適用はなく、検察官は被告の刑事責任を永久に追及することができる(新法第80条)。

3.公務員による差し押さえの効力を有する命令に対し、違反行為があった場合の処罰規定を新たに追加(新法第139条)。

4.罰金刑の改正。すなわち、最高法定刑が1年以下の有期懲役である場合、罰金刑を10万台湾元以下の罰金に修正し、最高法定刑が2年以下の有期懲役である場合、罰金刑を20万元以下の罰金とし、最高法定刑が3年以下の有期懲役である場合、罰金刑を30万元以下の罰金とし、最高法定刑が5年以下の有期懲役である場合、罰金刑を50万元以下の罰金とする(新法第276条、第277条、第279条、第281条、第284条、第320条および第321条)。

5.業務上過失致死罪および業務上過失傷害罪の処罰を削除し、また一般過失致死罪および一般過失傷害罪の法定刑を引き上げる(新法第183条、第184条、第189条、第276条および第284条)。

6.罪刑均衡の原則に適合させるため、直系血族尊属殺害罪の法定刑を修正(新法第272条)。

7.生母新生児殺害罪の減刑要件を修正し、やむを得ない事由により子女を殺害した場合にのみ当該減刑要件が適用されるようにする(新法第274条)。

8.「集団的暴行罪」の犯罪成立要件を修正し、かつ法定刑を引き上げる(新法第283条)。

9.「虐待および児童身心発達妨害罪」の被害者の適用年齢を16歳未満から18歳未満に引き上げ、法定刑を引き上げる。また、虐待による致死または重傷の処罰規定を追加(新法第286条)。

10.立法例に適合させるため、利益を図ることを意図とした、秘密を侵す罪の字句を修正。(新法第315条之2)。

11.外患罪の適用対象を、国外から「大陸、香港、マカオ」まで拡大(新法第115条之1)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。