第296回 事故物件の定義と賠償範囲について

買い主は5年前に仲介業者を通じて台北市内のある不動産を購入しましたが、かつて賃借人が家屋内で死亡し、死臭が漂ったことでようやく発見された経緯を持つ物件であることを今年になって知りました。

買い主は、売り主と仲介業者が「事故物件」の告知責任と部屋の状況を調査する義務を怠ったと考え、両者にそれぞれ損害賠償を求めて提訴しました。台北地方裁判所は、検察官の検査の結果、賃借人の死因は「病死または自然死」であり、事故物件の構成要件に該当しないため、売り主と仲介業者の賠償は免除されるとの判断を下しました。

事故物件の定義

内政部は2008年7月、事故物件を以下のように定義した解釈書簡を公表しています。「売り主の財産権保有期間において、その建築の改良物の専有部分(主である建物およびその付随建物を含む)において、殺人または自殺による死亡(自然死を含まない)の事実が発生、または専有部分において自殺行為による死亡(例えば、専有部分から飛び降り自殺し、他の階または中庭で死亡した)が発生したことがある。ただし、専有部分において切り付けられたが他の場所で死亡した場合(専有部分で死亡していない)は含まない。また、売り主の担保責任の範囲は売り出した家屋が事故物件でないことのみで、同じ棟の建物のその他の家屋は含まれない」

つまり、内政部の見解によれば、事故物件には以下の三つの要件があります。

1)時間:売り主の財産権の保有期間内に発生した

2)空間:専有部分において発生した

3)形態:殺人または自殺であること

売り主と仲介業者の賠償範囲

民法第354条の規定には「物の売り主は、買い主に対し、その物が第373条の規定に従い危険が買い主に移転する時点で、その価値を滅失または減少させる瑕疵(かし)が無いことを担保しなければならない」とあり、瑕疵担保義務は故意・過失を要件としないため、売り主が事情を知らなくても、事故物件を一般の相場の住宅価格と比較した差額を賠償しなければなりません。差額は通常、不動産鑑定士により鑑定されます。

また、仲介会社とその責任者は、善良なる管理者の注意義務を怠り、事実を明らかにすることができず、買い主が損害を被った場合は、売り主と共に連帯責任を負うと判断される可能性が高いです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。