第300回 簡易訴訟と少額訴訟

請求額が比較的少額で事案が複雑ではない紛争を通常の訴訟よりも迅速・簡易に解決する制度として、簡易訴訟手続きと少額訴訟手続きがあります。これらの手続きは地方裁判所で取り扱われ、日本の簡易裁判所のような専門の裁判所が設置されているわけではありません。

50万元以下で適用

財産権に関する訴訟で、その目的物の金額または価額が50万台湾元(約170万円)以下の場合、原則として、簡易訴訟手続きが適用されます(民事訴訟法第427条第1項)。また、訴額にかかわらず、定期賃貸借関係により生じた紛争、利息の給付請求など、第427条第2項各号に挙げられている紛争にも簡易訴訟手続きが適用されます。それらのいずれにも該当しない場合でも、当事者双方は、書面による合意により、簡易訴訟手続きを利用できます(第427条第3項)。

簡易訴訟手続きは、地方裁判所の裁判官が単独で行い、原則として、1回の期日で弁論が終結します(第433条の1)。また、当事者が請求を放棄または認諾した場合などには、判決に理由を書かずに主文のみを記載することができるとされています(第431条の1)。簡易訴訟手続きは上訴の利益が150万元を超える場合でない限り、第二審で終了し、第三審に上告することはできません(第436条の2)。

10万元以下で適用

金銭もしくはその他代替物または有価証券の給付請求訴訟で、その目的物の金額または価額が10万元以下である場合、原則として、少額訴訟手続きが適用されます(第436条の8)。また、その目的物の金額または価額が50万元以下である場合には、当事者双方は書面による合意により、少額訴訟手続きを利用できます(第436条の8第4項)。

少額訴訟手続きは、簡易訴訟手続きと同様に、地方裁判所の裁判官が単独で行い、原則として、1回の期日で弁論が終結します。そして、①当事者双方が同意した場合、または②証拠の調査に要する時間、費用が当事者の請求と明らかに不相当である場合には、裁判所は、証拠を調査せず、一切の事情を斟酌(しんしゃく)して事実を認定できるとされています(第436条の14)。また、判決には、理由を書かずに主文のみ記載することができるとされています(第436条の18)。少額訴訟手続きは、第二審で終了し、第三審に上告することができません(第436条の30)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。