第331回 扶養義務

「誰が誰に対して扶養義務を負うのか」ということについて、民法第1114条には以下のように規定されています。

「次の親族は、互いに扶養義務を負う:1、直系血族の相互間。2、夫婦の一方が相手の父母と同居する場合、その相互間。3、兄弟姉妹の相互間。4、家長と家族の相互間。」

民法第1116条の1には次のように規定されています。

「夫婦が互いに扶養義務を負うことについて、その扶養義務を負う順番は直系卑属(ひぞく、本人より下の世代)と同じであり、その扶養権利を受ける順番は直系尊属(そんぞく、本人より上の世代)と同じである。」

扶養の優先順位

扶養権利者が複数、かつ扶養義務者の経済力では全ての者を扶養できない場合、民法第1116条に規定される扶養を受ける者の優先順位は下記の通りです。

「1、直系尊属。2、直系卑属。3、同居の家族。4、兄弟姉妹。5、家長。6、夫婦の父母。7、息子の妻、娘の夫。」

なお、民法第1117条には次のように規定されています。

扶養権利者は、生活を維持することができず、生計を立てる能力がない者に限られる。前項の生計を立てる能力がないという制限については、直系尊属に対しては適用されない。

すなわち、上記の民法第1114条、第1116条の1の扶養権利者に該当する場合であっても、「生活を維持することができない」および「生計を立てる能力がない」という条件に適合しなければ、義務者に対して扶養義務を負うよう請求することはできません。一方、父母などの直系尊属については、「生活を維持することができない」という条件に当てはまりさえすれば、子女に扶養を要求することができます。

扶養費用の計算方法

扶養費用の計算方法について、裁判所は行政院主計総処が公表する各県・市の1人当たりの毎月の経常性消費支出を基準として扶養権利者の扶養費を計算しています。例えば、台北市の2018年の1人当たりの毎月の消費支出の平均額は約2万8,550台湾元(約10万2,000円)です。裁判所は、夫が台湾に居住する妻を扶養しなければならないと判断する場合、通常、上記の金額×扶養期間により夫が支払うべき扶養費を計算します。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。