第342回 和解について

 何らかの法律関係の争いがある場合、解決方法の一つに「和解」があります。和解とは、当事者間に存在する争いについて、双方が互いに譲歩し合い、当該争いを当事者間の話し合いによって解決することをいいます。台湾の和解手続きの種類や効力は、基本的に日本と同様です。以下では、根拠法規を示しつつ、台湾の和解手続きの概要をご紹介いたします。

訴訟上の和解

 既に裁判になっている争いについて裁判官の面前でする和解を訴訟上の和解といいます。裁判所は、訴訟のどの段階でも当事者に和解を促すことができるとされています(民事訴訟法第377条第1項)。また、双方の当事者は、和解の意思が固まった場合、裁判所に対して、和解案を定めるよう申し立てることができます(同法第377条の1第1項)。

 そして、訴訟上の和解が成立した場合、確定判決と同一の効力があります(同法第380条)。そのため、相手方が和解調書の内容を履行しなかった場合、和解調書をもって強制執行の申し立てをすることが可能です。

訴訟外の和解

 裁判所が関与せず、当事者のみで和解契約(民法第736条)を締結することを訴訟外の和解といいます。和解契約が成立した場合、各当事者が放棄した権利を消滅させ、和解契約で明記された権利を各当事者に取得させる効力があります(同法第737条)。

 もっとも、訴訟外の和解は、裁判所が関与しないことから、訴訟上の和解のように確定判決と同一の効力があるわけではありません。そのため、相手方が和解契約の内容を履行しなかった場合であっても、和解契約書をもって強制執行の申し立てをすることはできず、強制執行をするためには、原則として、民事訴訟を経る必要があります。

 このように、訴訟外の和解は、訴訟上の和解と比べて効力が弱く、権利を確保する手段としては少し不十分です。そこで、和解契約を締結する場合、和解契約書に「本契約書に定められた条項に違反した場合、直ちに強制執行を受けることに同意する」旨の強制執行条項を規定し、公証を経ることをお勧めします。このような対応をしておくことで、相手方が和解契約の内容を履行しなかった場合に、和解契約書をもって強制執行の申し立てをすることが可能となります(強制執行法第4条第1項第4号)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。