第361回 肖像権

台北地方法院(地方裁判所)は11月23日、ショッピングサイトAが柯という女優の肖像権を侵害したと認定し、ショッピングサイトAが当該女優に50万台湾元(約180万円)を賠償するよう命じる判決を下しました。

「女優と同じ」と宣伝

 本件の概要は次の通りです。

 柯という女優は台湾で高い知名度を有する女性芸能人です。ショッピングサイトAは2020年2月から、「柯という女優と同じデザインのピアス」をキャッチコピーとし、柯氏の同意を得ずに柯氏の写真を広告に使用し、サイト上で当該ピアスを販売しました。

 柯氏はこのことを知った後、自己の肖像権が侵害されたと判断し、ショッピングサイトAを被告とし、150万元の賠償を請求しました。

 台北地方法院は、ショッピングサイトAが柯氏の肖像権を侵害したと認定しましたが、本件の侵害の情状などを考慮し、賠償金を50万元に減額しました。

有名人でなくても請求可能

 いわゆる「肖像権」とは、自己の肖像を他者が使用することを認める、または認めない権利を意味します。

 民法第184条第1項は「故意または過失により、他者の権利を不法に侵害した場合、賠償責任を負う。善良の風俗に反する方法により、故意に他者に損害を与えた場合も同様とする」と規定しています。

 同法第195条第1項は「他者の身体、健康、名誉、自由、信用、プライバシーもしくは貞節を不法に侵害し、またはその他の人格的法益を不法に侵害し、情状が重大な場合、被害者は、財産上の損害ではないとしても、相当の金額の賠償を請求することができる。その名誉が侵害された場合、名誉回復のための適切な処分も請求することができる」と規定しています。

 裁判所の多くの判例で、肖像権は民法第184条第1項の「権利」および195条第1項の「その他の人格的法益」であると判断されていることから、自己の肖像が他者に無断で使用された場合、たとえ知名度を有する有名人ではないとしても、被害者は上記の条文を援用して加害者に対して侵害行為の差し止めまたは損害賠償を請求することができます。

 他方、他者の写真を使用しようとする場合には、違法となることを回避するため、事前に本人の授権を取得する必要があることにご注意ください。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。