第432回 憲法法廷による違憲判決

 2022年5月27日、憲法法廷は、最高法院(最高裁判所)の判断(最高法院22年度台簡抗字第13号民事決定)が憲法に違反しているとして、当該決定を破棄し、最高法院に審理を差し戻しました(22年度憲判字第8号)。本判決は、22年1月4日の憲法訴訟法の施行後、最高法院の決定を破棄し、審理を差し戻した初めてのケースです。本件の経緯および本判決の概要は以下の通りです。

国際的な子どもの引き渡し

 イタリア籍のA男と台湾籍のB女は未婚でしたが、14年に2人の子供であるC子が生まれました。その後、A男は、17年12月20日から18年1月10日までという約束でC子を連れてイタリアに帰りました。しかし、期限を過ぎてもC子が台湾に帰ってこないため、B女はイタリアに赴き、現地の駐外機構にC子のパスポートを紛失したとして再発行を申請し、手に入れたC子のパスポートを使って、C子を台湾に連れて帰りました。

 これに対し、A男は、C子をイタリアに連れ戻すため、台湾において訴訟を提起し、19年3月19日、台北地方法院(地方裁判所)に対し、C子をイタリアに連れ戻す仮処分(一定の要件の下、裁判の判決が確定するまでに暫定的に法的な地位を認めること)を申し立てました。

 台北地方法院は、当該件について、A男は暫定的にC子をイタリアに連れていき、同居してよいと判断しました(台北地方法院19年度家暫字第46号民事決定)。そして、当該判断は、抗告審(台北地方法院19年度聲抗字第122号民事決定)および再抗告審(最高法院22年度台簡抗字第13号民事決定)においても維持されました。

緊迫と必要性があるか

 B女は、これらの裁判所の判断は憲法に抵触しているとして、22年3月、憲法法廷に対し、憲法審査の申し立てを行いました。これについて、憲法法廷は主に以下のような理由により、最高法院の判断を破棄し、審理を最高法院に差し戻しました。

 裁判所が国際的な子どもの引き渡し事件について仮処分を行う場合、仮処分は本案の裁判前に、緊急状況下でなされる暫定的な必要措置に過ぎないので、十分に緊迫し、極めて強い必要性(現居住地の父または母による虐待があり、または監護能力を喪失している場合、現居住地でパンデミックや戦争などの重大事故が発生している場合で未成年子女が一時的に現居住地を離れる必要がある場合など)に基づき、継続性の原則、未成年子女の希望に反しないで、未成年子女に本案決定の確定前に暫定的に原居住地を離れ、他国に移住させるものである。そうでなければ、父母の親権の行使に影響を与えるだけでなく、憲法第156条で保障される未成年子女の最善の利益の趣旨に違反し、未成年子女の人格権および人間性尊厳を侵害している。

 決定前に未成年子女であるC子に意見を陳述する機会を与えておらず、C子が憲法の正当な法律手続きの保障を受ける権利を侵害している。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。