第443回 外国人投資許可取得制度違反に関連する刑事責任

台湾への外国資本の投資は、経済部投資審議委員会(投審会)から外国人投資許可(FIA:Foreign Investment Approval)を取得しなければならないとされています。

この制度の目的の一つは、中国大陸からの資本管理にあります。

刑事責任

台湾地域および中国大陸地域人民関係条例第40条の1第1項前段は「中国大陸地域の営利事業者または同事業者が第三地域において投資する営利事業者が主管機関の許可を得ずして台湾地域において設立する支店または事務所は、台湾において業務活動に従事することができない」と規定しています。

違反した場合、同条例第93条の2の規定により、3年以下の有期懲役、拘留に処されまたは1500万台湾元(約6900万円)以下の罰金を科され若しくは併科される可能性があり、また、会社名の使用が禁止される可能性もあります。

最近起訴された事例

上記の規定に違反するとして最近起訴された事例がいくつかあります。

例えば、8月30日、台北地方検察署(地検)が、中国大陸の立訊精密工業(ラックスシェア・プレシジョン・インダストリー)が台湾の宣徳科技(スピードテック)の株式を取得した際に中国大陸資本であることを隠し、香港の子会社、孫会社の名義でスピードテックに対する外国人投資許可を申請したと判断し、関係会社の責任者を起訴しました。

また、6月14日、士林地方検察署が、北京愛奇芸科技(iQIYI)が同社の支配する愛奇芸香港を通じて台湾の欧銻銻娯楽(OTTエンターテインメント)の責任者に複数回に分けて送金し、さらにその責任者がOTTに対する追加出資を行っていたことを突き止め、OTTの運営の方向性、従業員の賞罰なども全てiQIYIの承認を得る必要があったため、iQIYIが外国人投資許可を得ずに台湾で業務活動に従事することをOTTが助けたと判断し、関係者を起訴し、給与を犯罪所得と見なし、その没収を裁判所に提言しました。

最近の政治情勢から、中国大陸資本の浸透は世論や検察官から問題視されており、投審会においても外国人投資許可に対する審査を強化する可能性があります。もっとも、日本企業の場合、明らかな中国大陸からの資本が入っていない限り、大きな影響を受けることはないはずです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。