第449回 電話番号を勝手に取得し刑事責任を問われた事例

 ある不動産仲介業者が、ある市民が不動産を売る予定だと勘違いし、その市民の実家の電話番号を何とか探し出して電話をかけ、不動産を売りたいのかどうかを尋ねました。

 その結果、その市民は腹を立て警察局に通報し、警察局が調査した後、検察署の検察官による捜査のため移送され、起訴されました。

 裁判所は審理した後、「当該不動産仲介業者は電話番号が個人の身分を識別するに足りる個人情報であり、特定の目的がない限り、収集、処理または利用できないものであることを明らかに知りながら、家屋の販売に関する委託を取得することで、自己のために不法な利益を得ることを意図して、個人情報を違法に収集しようという犯意に基づき、はっきりしない方法で当該市民の実家の電話番号を取得した後、その番号に電話をかけ、当該市民に損害をもたらした」と認定し、不動産仲介業者に対し有期懲役2月(これに代えて6万台湾元=約27万円の罰金を科すことができる)とする判決を下しました。

個人情報収集が認められる場合

 個人情報保護法第19条第1項によりますと、非公務機関による個人情報の収集または処理は、特定の目的を有し、かつ次に掲げる事由の一に該当しなければならないとされています。

1.法律に明文の規定があること

2.当事者と契約またはこれに類する関係があり、かつ適切な安全措置を既に講じていること

3.当事者が自ら公開し、またはその他既に適法に公開されている個人情報であること

4.学術研究機関が公共の利益に鑑み統計または学術研究を行うに当たり必要であり、かつ情報が提供者による処理を経た後、または収集者によるその開示方式により、特定の当事者を識別することができないこと

5.当事者の書面による同意があること

6.公共の利益の増進のために必要であること

7.個人情報が通常取得可能な情報源から個人情報を取得されたものであること。ただし、当事者による当該情報の処理または利用の禁止について、さらに保護に値する重大な利益が明らかに存在する場合はこの限りでない

8.当事者の権益を侵害しないこと

違反した場合

 違反した場合、同法第41条および47条によりますと、自己もしくは第三者のために不法な利益を得ること、または他人の利益に損害を与えることを意図し、かつ他人に損害をもたらすに足りる場合、5年以下の有期懲役に処するものとし、100万元以下の罰金を併科することができるとされています。会社も主管機関から5万元以上50万元以下の過料の処分を受ける可能性があります。

 このため、電話番号に限らず、他人の個人情報を使用するに際しては、刑事責任を構成することがないようにするため、必ず特定の目的や上記の事由があるかどうかに留意する必要があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。