第451回 電力を窃取した場合の法的責任

最近、台湾社会で特殊な窃盗事件が発生しました。楊という親子3人が、電力を窃取したとして、裁判所から、それぞれ7~9月の有期懲役に処すると同時に、台湾電力(台電、TPC)に対し3934万台湾元(約1億7600万円)を連帯して賠償するよう判決を言い渡されました。

電線から盗電

本件の概要は次の通りです。

新北市の楊親子3人が、暗号資産(仮想通貨)「ビットコイン」を取得するために、新北市淡水区で4室、桃園市の平鎮区で2室を賃借し、それぞれに大量のコンピューターを設置して「採掘(マイニング、コンピュータによる演算を通じて暗号化された仮想通貨を取得すること)」を行いました。

「マイニング」には膨大な電力が必要であるため、楊親子は電力を得るために電線をTPCの変圧器に勝手につなぎました。

TPCは電力が盗用されていることを発見し、警察に刑事告訴を提出しました。

警察が調査したところ、2018年から、楊親子が各地域で窃取した電力が1000万キロワット時(kWh)に上ることが判明しました。これは100世帯に20年間連続使用するために供給するのに十分な電力量です。

電力窃盗罪で懲役と賠償

最終的に、刑事責任の面では、台湾高等法院(台湾高等裁判所)が楊親子は刑法第320条(他人の動産を自己または第三者の不法な所有とすることを意図して窃取した場合、窃盗罪となり、5年以下の有期懲役、拘留または50万元以下の罰金に処する)、第323条(電気エネルギー、熱エネルギーおよびその他のエネルギーは、本章の罪に関しては動産として扱う)の電力窃取罪を構成すると判断し、当該3人に対し7~9月の有期懲役に処するとの判決を言い渡しました。

民事責任の面では、士林地方法院(士林地方裁判所)が新北市での盗電行為に関して、桃園地方法院(桃園地方裁判所)が桃園での盗電行為に関して、楊親子はTPCに対し2507万元、1427万元の計3934万元の電気料金を連帯して賠償せよとの判決をそれぞれ下しました。

台湾メディアの報道によりますと、楊親子が数年来の「マイニング」により得た利益は100万元を超えないとのことです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。