第488回 M&Aのスクイーズアウト

日本企業にとって、台湾での合弁会社を組織再編、売却、または完全コントロールしたいとき、少数株主の反対で進められない可能性があります。この場合、スクイーズアウトが考えられます。

スクイーズアウトとは、企業の合併・買収を行う際、株主から個別に同意を得ることなく、金銭を対価として株式を取得する方法をいいます。

台湾では、原則として、企業M&A法の規定に従い、会社の株主総会において、「発行済株式総数の3分の2以上を代表する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が同意する決議(特別決議)」をもって、「合併」または「株式交換」の決議をするという手法により、台湾子会社を日本親会社の台湾支店または完全子会社とすると同時に、少数株主の同意を得ることなく、金銭を対価として台湾子会社のすべての株式を取得できます。

支店とする場合

台湾子会社を日本親会社の台湾支店とする場合、「合併」という手法が考えられます。
合併にもいくつか種類があり、「双方の株主総会の特別決議をもって、現金等を対価とし、存続会社に、消滅会社のすべての権利と義務を一括して承継させる」という手法があります。
日本親会社を存続会社、台湾子会社を消滅会社とすることも可能です。この場合、日本親会社から台湾子会社の株主に現金を対価として支給することができます。

完全子会社とする場合

台湾子会社を日本親会社の完全子会社とする場合、「株式交換」という手法が考えられます。
株式交換とは、会社が株主総会の特別決議をもって、すべての発行済み株式を他社に譲渡することの対価として、譲受人から会社の株主が現金等を受け取る行為をいいます。
また、台湾子会社を売却したい場合、合併先または株式交換先を売却先にすることも考えられます。
なお、上記のいずれの場合でも実際の状況に応じて法務・会計上の対応手段が変わるため、実施する前に、現地の専門家に相談することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。