第503回 株式会社の株式譲渡制限について

普通の株式会社において定款で株式譲渡制限を設けた場合、台湾の会社法第163条の第1項に「会社株式の譲渡について、定款で禁止または制限をしてはならない」という規定が存在するため、当該定款の内容は無効とされていますが、閉鎖的株式会社の場合には、同法第356条の5第1項に「(閉鎖的株式)会社の株式譲渡制限は、定款に明記しなければならない」という規定が存在するため、株式譲渡制限を設けた定款の内容は有効とされています。

具体的な制限形態について

閉鎖的株式会社における定款での株式譲渡制限に関する具体的な定めについては、「株主間に限って許される」などとすることや、譲渡の承認をする会社機関(取締役会、株主総会、代表取締役など)を決めておくことなどで対応するのが一般的です。

また、主管機関である経済部は、2019年6月3日経商字第10800588640号書簡により下記のような制限形態を認めています。

1.株式は特定の身分の者にしか譲渡できないとすること。

2.一定の期間においては他の株主やその二親等以内の親族にしか株式を譲渡できず、一定の期間が経過した後においては、全株主の同意を取得しなければ特定の身分以外の者に株式を譲渡することはできないとすること。

株式譲渡制限に違反した場合

冒頭の説明のとおり、普通の株式会社においては定款で株式譲渡制限を設けることができないため、株式譲渡を制限したい場合には、契約で設けることになります。

もっとも、このような株式譲渡制限に関する契約に違反した場合、株式譲渡行為自体に効力が生じ、契約違反当事者が賠償責任を負うという事案が多いです。

他方、閉鎖的株式会社の場合には、定款における株式譲渡制限が法令または公序良俗に反しない限り、当該制限に違反した形で株式譲渡が行われたとしても、株式譲渡行為自体に効力は生じないとされています。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。