第583回 軍事施設の撮影

中国では、時折、日本人が中国の軍事施設を撮影した等の理由で拘束されたといったニュースがあり、現地にいる多くの日本人は、不用意に外で周囲を撮影しないよう注意しています。

台湾では、このようなニュースを目にすることがなく、あまり意識していない方も多いと思われますが、台湾でも何ら規制がないというわけではありません。

今回は、台湾における軍事施設の撮影等に関する規制について紹介させていただきます。

罰金3万元以上

台湾では、2024年1月3日に、国家の安全を守るため、軍事営区安全維護条例(以下、「本条例」といいます)が制定・公布され、2025年8月1日に施行されました。

本条例第3条第1項第1号により、軍事施設とは、重要な軍事施設または軍事機関の駐屯地を指します。また、軍事機関が関連機関に通知し、管理される軍事演習または軍事訓練の区域は、演習または訓練期間中、軍事施設とみなされます。

そして、本条例第6条第1項により、軍事機関の許可を得ずに、軍事施設においてまたは軍事施設に対して、以下の行為を行うことが禁止されています。

1. 軍事施設へ立入ること。

2. 録画・撮影機器、観測装置、銃器、弾薬、刃物その他の軍事施設の安全を妨げる物品を携帯すること。

3. 測量、録画、撮影、描画、記述その他の偵察行為に従事すること。

4. 主管機関が公告した軍事施設の安全に影響するその他の行為。

上記3の軍事施設の撮影に関して、軍事施設外から軍事施設を撮影し、軍事施設の安全を害するに足ると認められた場合には、本条例第22条柱書および第1号により、3万台湾元(約15万円)以上15万台湾元以下の過料に処されます。

松山空港の撮影にも注意

なお、台湾に所在する空港のうち、松山、花蓮、台南、澎湖、台中、嘉義の空港は軍民共用空港とされ、その一部が軍事施設とみなされます。特に松山空港は日本人の利用客も多いと思われますが、飛行機の離着陸の前後で窓の外を撮影すると軍事施設が写り込んでしまう可能性があるため、注意が必要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。