第600回 人の命の重さとは
昨年3月、台中市の男性が男子医学生を死亡させる交通事件が発生しました。本件の加害者は、飲酒運転、無免許、スピード違反、信号無視に加え、ひき逃げをしたとして、当時大きく報じられました。この事件について台中地方裁判所裁判員法廷(中国語:台中地方法院国民法庭)は昨年末、被告人(加害者)に対し懲役10年の判決を言い渡しました。
結果の重大性と刑の不釣り合いが波紋を呼んでいます。
裁判員制度で
いわゆる裁判員制度を指す「国民法官制度」は、抽選により無作為で選ばれた6名の市民が、3名の職業裁判官とともに法壇に並んで審理し、被告人が有罪か無罪か、罪名や科すべき刑罰を判断する制度です。裁判員(中国語:国民法官)に選ばれるには、地方裁判所が管轄する区域に連続して4カ月以上居住する、満23歳以上の中華民国国籍を有している者である必要があります。
国民法官制度は2023年1月1日に正式に施行され、これまで児童虐待致死など、故意の犯罪により死亡結果が発生した刑事事件について、同制度の対象事件とされてきました。
もっとも、今年(2026年)1月1日からは、上記の事件類型に加え、少年刑事事件および薬物危害防止条例違反事件を除く、「法定刑のうち最も軽い刑が10年以上の有期懲役である罪」についても国民法官制度の対象事件となります。
法定刑の壁と遺族の感情
今後、ご遺族は上訴する方針とのことですが、実務上、国民法廷で下された判決を覆すことは容易ではないとされています。被害者の父親は取材に対し、「21歳という若く優秀な青年の人生が奪われ、夢を叶えて社会に貢献する機会すら失われた。これほど悪質な事件であるにもかかわらず、加害者は10年の刑で済むという。裁判所の判断は到底受け入れがたい」と述べたといいます。最愛の息子を不条理に奪われたご遺族のやり場のない思いは、計り知れません。法定刑の壁と被害者遺族の処罰感情。あなたがこの事件の国民法官だったとすれば、どのような判決を下したでしょうか。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
高校時代に参加した弁護士の講演がきっかけとなり、国際的に活躍できる法曹を志す。
高校卒業後、台湾の大学に進学し中国語の習得並びに国際感覚の涵養に励む。
在学中は積極的に日台比較法研究会への参加、現地の法律事務所でのインターン等を通して自身の法律知識を深めた。
台湾法のみならず、様々な法分野においてクライアントに寄り沿うことができる弁護士を目指し、日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。
