第38回 統一領収書を他者に提供して使用させた場合の法的責任

台北地方裁判所は、2013年11月5日付で作成した13年度審訴字514号刑事判決書において、会社責任者が空欄の公的レシート「統一発票」を他者に交付し、その他者が不実の内容の統一発票を他の営利事業者(訳注:営業税法第6条に定義されている者)に発行し、仕入税額控除の証憑として使用されるのを看過した場合、会社責任者自身が領収書を発行していないとしても、商業会計法第711条第1号の不実の会計証憑作成罪および税金徴収法第43条第1項の税金の他者による脱税のほう助罪を構成する、と指摘した。

いわゆる「統一発票」とは、台湾の営利事業者(訳注:所得税法第11条第2項に定義されている者。以下同じ)が商品または労務を販売する際に発行して買い手に交付し、双方の取引を証明する会計証憑を指す。また、買い手も営利事業者で、仕入れなどにより統一発票を取得した場合には、その統一発票を仕入コストの証明書類として、営業税などの税金の控除を受けることができる。

本件の概要は次の通りである。

甲は乙の委託を受け、10万台湾元の対価でA社の名目上の責任者を担当し、財政部に申請したA社の空欄の統一発票を乙に交付した。乙は08年下半期に、A社とB、C、D、E、F、Gなど6社との間に、いかなる取引もなかったことを明らかに知りながら、A社を販売者とした商品数量、金額のいずれも不実である24枚の統一領収書を発行してその6社に交付した。それらの会社は直ちにA社の統一発票を仕入れの証憑として税金徴収機関に税額控除を申告し、これにより営業税計約160万元を脱税した。

甲は直接発行していなくても犯罪に

裁判所は審理の結果、次の通り判断した。

会社責任者が不実の事項であることを明らかに知りながら、不実の内容の統一発票を発行したことは、商業会計法第71条第1項の不実の会計証憑作成罪を犯している。甲はA社の名目上の責任者であり、受領した空欄の統一発票を乙に交付し、乙が不実の統一発票を他の納税義務者に発行して営業税控除の証憑とされるのを看過した。甲乙間には犯罪意思の疎通があるため、本件の統一発票は甲自身が発行したものではないとしても、甲は依然として本罪を構成し、また、税金徴収法第43条第1号の税金の他者による脱税のほう助罪を同時に構成する。

統一発票の管理は厳重に

商業会計法第71条第1項の法定刑は5年以下の有期懲役刑、拘留もしくは60万元以下の罰金またはその併科であり、税金徴収法第43条第1項の法定刑は3年以下の有期懲役刑、拘留または6万元以下の罰金と、いずれも軽罪ではない。したがって、違法リスクを回避するため、会社の空欄の領収書は絶対に他者に交付してはならず、また、厳重に保管するよう、会社の経営者は注意すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。