第65回 女性労働者の深夜労働について

企業に労働基準法(以下「労基法」という)の確実な順守を促すため、台北市政府労働局は奇数月の各月末に、労働局の認定する労基法違反企業を公表している。直近では、労働局は43社の違法企業を公表しており、当該違法企業リストには、台湾の有名な新聞社「蘋果日報」も記載されている。同社の違法の主な理由は、労使会議の同意を得ずに女性労働者を深夜に労働させたこと、および、労働者の出勤簿を規定通りに備え置かなかったことである。

労基法第49条第1項には「雇用主は、女性労働者を午後10時から翌午前6時まで労働させてはならない。ただし、雇用主が労働組合の同意を得た後、または事業者組織内に労働組合がない場合は労使会議の同意を得た後、かつ以下の各号の規定に該当する場合は、この限りでない」とし、以下のように定めている。

1.必要な安全衛生施設を提供すること

2.利用可能な公共の交通機関がない場合、交通手段または女子寮を提供すること

違反企業には罰金も

また、同法第30条第5項には「雇用主は労働者出勤簿またはタイムカードを備え置き、毎日労働者の出勤状況を記載しなければならない。この出勤簿またはタイムカードは1年間保管しなければならない」と規定されている。上記の規定に違反した場合、雇用主は主管機関から同法第79条に基づき2万台湾元以上、30万元以下の過料に処される。

「蘋果日報」は同時にこの2つの規定に違反しているが、初犯であるため、労働局は罰を軽くし、計4万元の過料に処している。

「蘋果日報」のような報道機関は、業務の性質上、たとえ女性従業員であっても、午後10時以降の深夜労働がたびたび必要となる。もし貴社も女性従業員に深夜労働をさせる可能性がある場合には、主管機関から処罰されないよう、必ず、事前に労働組合または労使会議の同意を得て、かつ法に基づき必要な安全衛生施設(例えば、休憩室、シャワールームなど)、交通手段または宿舎などを提供しなければならない。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)