第75回 一人株式会社の清算人選定方法

法人株主が清算人を指名可能

経済部の最近の見解によれば、一人株式会社(法人株主が一人のみの株式会社)は、董事会において会社解散の決議を行った場合、董事全員が法定清算人とならなければならないが、もし董事が皆清算人となることを望まず、また、会社定款にも清算人が指定されていないときは、会社が清算手続きを行えるよう、法人株主が適切な者を指名して清算人を担当させることができる。

会社法第322条第1項の規定によれば、会社が清算を行う際は、別段の定めがある場合または株主会において別途清算人を選任する場合を除き、董事が清算人となり、また、同法第128条の1第1項の規定によれば、法人株主が一人で組織する株式会社については、株主会の職権は董事会が行使する。また、経済部の2009年11月2日の経商字第09802144800号書簡によれば、法人株主が一人で組織する株式会社が董事会において会社解散の決議を行ったときは、定款に別段の定めがある場合を除き、董事会が株主会の職権を代行して別途清算人を選任するのではなく、董事全員が自ら法定清算人とならなければならない。

ここから分かる通り、一人株式会社は董事会による会社解散の決議後に清算手続きに入り、また、董事全員が清算人とならなければならない。しかしながら、この場合、もし董事が皆清算人となることを望まず、また、会社定款にも清算人の選任について規定がないときは、法律上、清算を行う清算人がいないという問題が生じることになる。そのため、経済部の直近の14年11月3日の経商字第10302128450号令の規定によれば、この場合、法人株主は適切な者を指名して清算人を担当させることができる。

日台の法律に詳しい弁護士に依頼

実務では、多くの日本企業が台湾において100%子会社(台湾子会社の株主は日本の本社のみ)を設立しているため、上記の一人株式会社が清算を行うときの問題は日本企業にも発生する可能性がある。弊所が日系企業のために清算人を務めたときの経験によれば、日本企業の台湾子会社が清算を行うときには、日系企業の利益を確保するため、台湾法および日本法に詳しい弁護士事務所に清算手続きを依頼すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。