第87回 電子支払機関管理条例の概要

新しい形態のインターネット取引に対応するため、各界で注目されている「電子支払機関管理条例(中国語:『電子支付機構管理條例』。以下『本条例』という)」が2015年1月16日に立法院の最終審議で可決され、馬英九総統により2月4日に公布された。通常からすると、本条例は15年中に正式に実施される見込みである。

本条例の適用対象は「電子支払機関」であり、同条例第3条第1項では、「本条例にいう電子支払機関とは、主管機関の許可を得て、インターネットまたは電子支払プラットホームを媒介として、ユーザー登録を受け、資金の移動とチャージ状況を記録するための口座(以下「電子支払口座」という)を開設し、かつ、電子設備を利用してオンラインで支払情報と受取情報を伝送し、金員の支払人と受取人との間で下記の業務を経営する会社を指す。ただし、第一号の業務しか経営せず、かつその保管し支払い・受け取りを代行する金員の残高総額が一定の金額を超えない場合は含まれない。一.実際の取引における金員の支払い・受け取り。二.チャージ金員の受け取り。三.電子支払口座間の金員移動。四.主管機関が決定するそのほかの業務」と規定されている。

簡単に言えば、本条例の主旨は「第三者による支払い」業務を経営する業者について規範化することであり、第三者とは主に取引の双方当事者以外の第三者を指すため、米国の「PayPal(ペイパル)」、中国の「支付宝(アリペイ)」のようなインターネットでの金員の受取・支払代行、チャージなどのサービスを取り扱う業者は、本条例の「電子支払機関」に該当する。

弁済基金を積み立て

また、本条例のポイントは以下の通りである。

1)業者の払込資本金の最低額は1億台湾元:本条例では、金額チャージ、口座間の資金移動を取り扱う電子支払機関についてはその払込資本金の最低額を5億元とするが、支払・受取代行業務しか扱わず、かつ保管する残高総額が一定の金額を超えない場合、払込資本金の最低額は1億元とする、と規定されている。

2)チャージ金額、送金金額の上限は5万元:電子支払機関がユーザー1人当たりから受け取る台湾元および外貨のチャージ金額は、その残額が合計で5万元を超えてはならない。

3)弁済基金:本条例では、電子支払機関は資金を積み立てて「弁済基金」を設立しなければならず、電子支払機関がその財務状況が厳しく弁済能力を失ったために違約した場合、弁済基金は、第三者の身分で消費者に弁済することができる、と規定されている。

4)海外の機関は許可申請が必要:本条例では、海外の機関は台湾で電子支払業務を経営しようとする場合、電子支払機関管理条例に従って電子支払機関の設立許可申請を行わなければならず、中国資本に関わる場合は、「台湾地域と中国大陸地域の国民の関係にかかる条例」の規定に適合しなければならない、と規定されている。

本条例の主管機関の金融監督管理委員会によれば、今年5月までに、本条例に関連する下位法の制定業務が完了する予定とのことである。下位法の完成後は、外国企業を含めた業者が「電子支払機関」となるための申請方法についてより具体的で明確な規定ができているはずなので、これにいっそう注意を払うのがよいだろう。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。