第116回 就業サービス法の改正について

2015年9月18日、立法院本会議で就業サービス法の第48条の1、第52条、および第55条に関する改正法案が可決された。この改正により、外国籍の介護労働者(原文では「看護工」)の台湾在留年数の制限が条件付きで緩和され、将来的に外国籍の在宅介護労働者の台湾での最大就労年数が12年から14年に延長されることになり、介護分野における人材不足問題の解決が図られることが期待されている。

累計14年に延長

従来、台湾における外国籍の介護労働者の就労期間は累計で12年を超えてはならなかったが、少子高齢化に伴い、介護分野の人材に対する需要が増えてきたことから、今回の改正法では主に介護分野における労働力不足の問題の解決に重点が置かれた。

そこで、今回改正された就業サービス法の第52条第5項では、在宅介護の業務に従事する外国籍の労働者の台湾における就労期間の累計年数が14年に延長された。ただし、外国籍の介護労働者が自ら学習する能力があり、または専門的な訓練を受けたことがあり、かつ働きぶりが特別によく、また中央主管機関が規範する資格および条件(言語能力、業務上のスキル、学歴等)に適合した場合において、上記延長は初めて認められるとされている。

低収入家庭を支援

次に、低収入家庭が外国籍の介護労働者を雇う費用の負担を軽減するため、今回改正された就業サービス法の第55条第3項では、使用者または介護を受ける者が低収入家庭または中・低収入家庭に該当する場合、身体障害生活補助費を受けており、または老人福祉中・低収入生活手当を受けているときには、外国籍の介護労働者を雇う際に「就業安定費」の納付が免除されると規定されている。なお「就業安定費」とは、同法第55条第1項によれば、中央主管機関が設置する就業安定基金専用口座に納付されるもので、国民の就業を促進させ、労働者の福祉を向上させ、外国人の雇用管理事務の処理を強化するための費用のことを指す。

なお、使用者に外国籍の介護労働者を雇用する際の関連規範をよりよく理解してもらい、その権益を保護するため、同法第48条の1第1項において、台湾の使用者は初めて外国人を雇用し在宅介護または家事労働に従事させる前に、主管機関または主管機関が委託した非営利組織が行う講習に参加し、許可申請を行う際は講習に参加済みであることの証明文書を添付しなければならないと規定された。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。