第139回 UFOキャッチャー設置が賭博罪に?

日本において、UFOキャッチャーまたは類似するクレーンゲーム機は非常に一般的であり、台湾人などの外国人観光客からも、とても人気が高い。もっとも、台湾で類似するクレーンゲーム機を設置した場合は、犯罪行為となる可能性があるので、注意が必要である。

先日、基隆地方検察署の検察官は一人の男性(以下「被告」という)を起訴した。起訴状の趣旨は簡単にいうと次のようなものである。

被告は基隆地区においてクレーンゲーム機の店を2店舗開設し、店内にクレーンゲーム機を数台設置したが、機械内に「商品の価格」および「商品取得保証」(つまり、消費者が商品をつかみ取ることができなくても、投入金額が当該商品の価格に達した場合は、商品を取得することができる、という意味)」を表示しなかったため、商品を取得できるかどうかが、偶然性によって決定されるようになってしまい、それゆえ賭博行為に該当し、刑法第266条の賭博罪が成立する(公共の場所または公衆が出入りできる場所で財物の賭博を行った場合、1,000台湾元以下の罰金を科す)。

営業証も未取得

また、被告は電子遊技場営業証を取得していない上、電子遊技場業管理条例第15条(本条例の規定に従って電子遊技場業の営業級別証を保有していない場合、電子遊技場業を経営してはならない)に違反しており、同条例の第22条の規定に従って、行為者を1年以下の懲役、拘留に処しまたは50万元以上250万元以下の罰金を科しまたは併科することができる。

UFOキャッチャーがおもしろいのは、機械の中の商品が「買う」ためにあるのではなく、商品を取得できるかどうかが消費者の技術や運によって決定されるからである。そのため、基隆地方検察署がクレーンゲーム機の設置を「賭博行為」と判断したことは、一般の台湾人にとっても賛同し難いことであった。しかし、基隆地方検察署の判断基準は、台湾検察官共通の見解であるため、営業場所においてクレーンゲーム機の設置をお考えの企業は、事前に電子遊技場の営業証を取得し、また機械内に商品価格および商品取得保証を表示しなければならないことに注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。