第150回 「ウーバー」送迎サービス、台湾では違法行為

「Uber(ウーバー)」という名前を聞いたことがあるだろうか?ウーバーとは米国の同名会社によって開発されたアプリケーションであり、その主な機能は、自家用車の運転手にウーバーの提携運転手として登録してもらい、配車を必要とする消費者(乗客)とマッチングさせ、成功した場合、消費者が支払った乗車賃を運転手とウーバーが共有する、というものである。この革命的なビジネスモデルは、運転を職業としない車の所有者が乗客送迎によって収入を得ることを可能とさせ、また一般の消費者にとっては安い費用で高品質な輸送サービスを受けられるため(例えば、多くのウーバーの運転手はベンツなどの高級車でサービスを提供している)、世界各国で歓迎されている。

最高行政裁も違法判断

ところが一般の自家用車の運転手は、許可を取得していないため、ウーバーを通じて乗客送迎サービスを提供し、報酬を得る行為は、台湾の法律に違反している。先日、あるウーバーの運転手が乗客送迎行為により交通部道路総局に検挙され、5万台湾元の過料および運転免許の2カ月間停止処分を受けた。その運転手は処分を不服とし、交通部道路総局を被告として行政訴訟を提起し、不利な処分を取り消すよう求めた。最高行政裁判所は審理後、2016年5月26日に、ウーバー運転手の敗訴を認定する判決を下した。主な理由は以下のとおりである。

1.道路法第77条第2項には、本法に従って許可を申請せずに、自動車運輸業を営んだ場合、過料を科し、その営業停止を強制的に命じなければならず、その不法営業を行った車両のナンバープレートを2〜6カ月間没収、または取り消すことができる。

2.ここでの「営業」について、全体的かつ客観的な事実からこれを見て、当事者が繰り返して実施する意図があった場合、たとえ1回だけ検挙されたケースであっても(初めての実施で検挙されたケース、および複数回実施したうち1回だけ検挙されたケースを含む)、それが営業行為であるという判断に影響を及ぼさない。

3.本件のウーバー運転手は乗客送迎行為について1回だけ検挙されたが、ウーバーウェブサイト上の「われわれのコミュニティーの乗客に市内で送迎サービスを提供するだけで、毎週報酬を得ることができる」、「乗車賃を稼ぐために、自らがボスとなって、自由にサービス時間を決められる」、「車が商売道具へと変わり、ウーバーによって簡単にお金を稼ぐことができる」などの文章およびウーバーの運営方式から見ると、ウーバーに加入する運転手は、営利を目的としており、繰り返して実施する意図があり、当然のことながら営業行為に該当すると認めるのに十分であることが分かる。従って、本件運転手が事前に許可を得ずに輸送の営業行為に従事したことは、当然のことながら道路法に違反している。

ウーバーを利用して乗客送迎サービスを提供することにより、一定の報酬を得ることができるが、検挙された場合は、政府当局の処罰を受ける可能性が非常に高いため、注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)