第153回 誤って税金を過大に納付した場合の処理方法

今回は、誤って税金を過大に納付した場合の処理について説明する。

誤って税金を過大に納付した場合の処理については、台湾の税金徴収の基本法である税捐稽徴法(税務調査徴収法)に定められている。具体的には、関税と鉱物税以外の全ての国税や地方税に関して、同法第28条に基づき処理される。

同条は以前、「納税義務者は、法令適用の誤りまたは計算の誤りのため、過大に納付した税金について、納付した日から5年以内に具体的な証拠を提出し、還付申請を行うことができる。当該期限が経過し、かつ当該期限内に還付を申請していない場合には、還付を申請してはならない」と規定していた。

しかし、過大納付の原因のいかんを問わず、税金を納付した日から5年が経過すると税金還付を申請してはならないという制限には、さまざまな苦情が寄せられていた。

政府の誤り、5年以上でも還付申請可能

そのため、税捐稽徴法第28条は改正され、現在は過大納付の原因により、以下のように処理方法が分けられている。

  1. 納税義務者が自らの誤りで過大に納付した場合(第28条第1項)、納税義務者は、自らの法令適用の誤りまたは計算の誤りのため、過大に納付した税金に対し、納付した日から5年以内に具体的な証拠を提出し、還付申請を行うことができる。当該期限が経過し、かつ当該期限内に還付を申請していない場合には、還付を申請してはならない。
  2. 政府の税務調査徴収機関の誤りで過大に納付した場合(第28条第2項)、税務調査徴収機関の法令適用の誤り、計算の誤り、またはその他政府機関の誤りのため過大に納付された税金について、税務調査徴収機関は、誤りを知った日から2年以内に調査の上、誤りを明らかにし、還付しなければならない。還付する税金は、5年以内に過大に納付された分に限らない。

誤って税金を過大に納付したことに気がついた場合、その原因が何であるか確認し、自己に誤りがある場合、早急に手続きを行う必要がある。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。