第180回 会社法の大幅改正の方針について

経済部は本年(2017年)2月14日、会社の経営の柔軟性を高めるとともに、新規事業のニーズを満たすために、現行の会社法の条文を段階的に大幅に改正すると公表した。改正の方針は以下の通りである。

  1. 外国企業による台湾投資の利便性を高める。現在は外国の会社が台湾において支社を設立する場合、台湾当局の認可を取得しなければならず、また、中国語の社名で支社の登記を行わなければならない。改正後は認可制度を廃止し、外国語の社名で登記を行うことも可能となる。
  2. 科学技術およびネットワークの利用を増やす。現行の会社法によると、株主総会はテレビ会議または電話会議の形式で開催してはならないが、改正後はこの制限が廃止される。このほか、現在は会社の設立登記または変更登記の申請に当たり、いずれも紙ベースの文書を使用しなければならないが、改正後はネットワーク上で行うことが可能となる。
  3. 会社の組織形態、経営の柔軟性を高める。現行法の下では、株式会社の董事は3人以上でなければならないため、適切な董事候補者を見つけられなかった場合、従業員に董事を務めさせるか、または有限会社へと組織変更するケースがあった。改正後はこの制限が廃止される。このほか、現在は董事長にのみ董事会の招集の権利があるが、改正後は董事長のほか過半数の董事も董事会を招集することが可能となる。
  4. 閉鎖的株式会社に関する規定の適用範囲を拡大する。会社法は15年に「閉鎖的株式会社」の章節を新たに追加し、閉鎖的株式会社であれば▽現金、財産、技術、労務または信用をもって出資することができる▽定款により株主によるその株式の譲渡を制限することができる▽否決権など特殊権利付特別株を発行することができる──などが規定された。改正後は、前述の閉鎖的株式会社の規定は一般的な株式会社にも適用されるようになる。
  5. 株主権益保障の保障を高める。現行法の下では、会社の株主は株主会を開催する必要があると判断した場合、董事会に対し召集するよう要求するか、または主管機関の許可を取得した後に自ら召集するしかない。改正後は、保有する株式が50%に達する株主は、制限を受けることなく株主会を招集することができるようになる。

経済部によれば、本年中に一部改正を完了させる予定である。その際には、各社の定款または社内規則について大幅な修正を行う必要があるかもしれないため、特にご注意いただきたい。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。