第193回 永住権・居留権の規制緩和について

1.台湾の永住権の要件の緩和(本規則の2012年10月25日改正・公布)

改正前の本規則第12条では、外国人が台湾における投資移民の申請をする場合において、1)「1,500万台湾元以上の営利事業に投資し、かつ台湾人のための就業機会を5件創出して3年以上経過したとき」、または、2)「3,000万台以上を、出入国移民署が目的事業の主管機関と共同で指定する投資移民基金に投資して5年以上経過したとき」には、出入国移民署は永住権を許可することができる旨規定されていた。

改正後の本規則では、上記2)の投資移民基金の規定は削除され、その代わりに、「中央政府の公債に3,000万元以上の額を投資して3年以上経過した場合」または「中央政府の目的事業の各主管機関が特定の目的に基づき計画する投資案に投資し、かつ当該機関の認定を経た場合」であれば、台湾の永住権を許可することができる旨規定された。なお、上記1)の「1,500万元以上を投資し、かつ就業機会5件以上を創出して3年以上経過したとき」という規定については削除されず、そのまま維持されている。

2.居留期間の延長(本規則の14年4月22日改正・公布)

改正後の本規則第8条において、親の一方が外国人居留証または外国人永住証を所持し、居留許可を有する20歳以上の外国人で、かつ以下のいずれかに該当する場合、出国期限の延期を申請することができる旨が規定されている。

①適法な居留が累計で10年に達し、毎年の滞在日数が270日を超えている

②16歳未満で中華民国に入国し、毎年の滞在日数が270日を超えている

③中華民国で生まれ、適法な居留が累計で10年となり、毎年の滞在日数が183日を超えている

再申請は1回、3年まで

また、改正後の本規則第9条によれば、延長が許可された場合、有効期間はもともとの居留期限が満了した翌日から3年間とし、必要がある際はもう一度延長を申請できるが、その期間は3年間を超えてはならないとされている。

なお、改正前の本規則第22条における出国期限延期の適用対象は、台湾に投資または仕事のために来る外国人のみとされていたが、改正後の本規則第22条の1をもって留学者が追加された。また、同条において本来15日だった延長期間が、6カ月まで延長された。16年1月28日に内政部が公布した改正草案では、さらに延長期間が1年間に改正される予定だったが、現時点ではまだ立法院で可決されていない。


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執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。