第201回 化粧品の広告の適法性に関する確認について

化粧品の広告について、台湾では従前より「広告を掲載する前には必ず主管機関による事前審査を受けなければならない」という制度を採用していた。ところが、本年(2017年)1月、有名な日系企業D社が憲法の解釈に関する訴訟において勝訴を勝ち取ったため、当該制度が大幅に変更された。

日焼け止め乳液の広告

当該事件の概要は次の通りである。

有名な日系企業D社は09年、あるショッピングサイトに日焼け止め乳液の広告を掲載し、その内容は「肌の表面に保護膜を形成し、太陽光により肌が傷つけられるのを防止し…」というものであった。

台北市政府衛生局は、D社が当該広告を掲載する前に化粧品衛生管理条例に従って事前審査を申請していないと判断したため、D社に対し3万台湾元の罰金を処した。D社はこれを不服とし、当該処分につき訴願、行政訴訟を提起したが、敗訴した。

しかしながら、D社は諦めず、さらに「化粧品の広告に関する事前審査制度は不当であり、言論の自由を制限している」ことなどを理由として、司法院裁判官会議に対し憲法の解釈を申請し、裁判官会議において当該事前審査制度が憲法に違反していることを認定するよう請求した。

裁判官会議はD社の主張を認め、また「化粧品の広告に関する事前審査制度は17年1月6日から失効する」と宣言した。従って、同日から、化粧品の広告を掲載する前に主管機関による審査を受ける必要がなくなった。

適法・違法の語句を規範化

なお、現在、化粧品の広告内容の適法性については、主に「化粧品につき掲出可能な語句の例示および掲出に不適切な語句の例示(以下「本例示」という)」において規範化されている。本例示において化粧品の広告中に使用可能または使用してはならない各種の語句が規定されており、違反した場合、化粧品衛生管理条例第30条の規定に従い、業者は5万元以下の罰金または営業登記の廃止などの処罰を受ける。

広告において不適切な語句を使用したことにより処罰を受けないようにするため、化粧品業者は広告を掲載する前に、なお本例示の規定を詳しく調べ、かつ法律専門家の意見を求めるべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。