第207回 董事会決議に瑕疵がある場合

7月13日、董事会決議に瑕疵(かし)がある場合に、董事長がなした法律行為の効力について、最高法院民事判決(民国106年度台上字第133号)が下された。判決の概要は、以下のとおりである。

「董事会が会社権力の中枢であることに鑑み、権力が適法に運用されることを確保し、株主全体の利益を保障するため、董事会の招集手続きおよび決議方法が会社法第202条、第204条、第206条等の関連規定に符合することが厳格に求められる。

董事会の招集手続きまたは決議方法に瑕疵がある場合、同法第189条を準用する明文はないが、董事会が、董事全体に意見交換の場を提供し、会社業務の方針を決定するという董事会の趣旨をもってみると、上記規定に違反した場合、そのなされた決議は無効であるべきである。また、同法第208条第3項により、株式会社の董事長は、対内的には株主総会、董事会および常務董事会の議長であり、対外的には会社を代表する。董事長が対外的になした法律行為が董事会決議を経ておらず、またはその決議に瑕疵がある場合、その状況を取り引きの相手方が明らかに知っていれば、当該法律行為は会社に対してそもそも効力を生じない」。

株主総会決議に瑕疵がある場合との相違

会社法第189条には「株主総会の招集手続またはその決議方法が法令または定款に違反する場合、株主は決議の日から30日以内に裁判所に対しその決議の取り消しの訴えを提起することができる」とあり、株主総会の場合には、決議に瑕疵があっても原則として有効とされている。しかし、上記判決は、董事会の趣旨に鑑みて、董事会決議に瑕疵がある場合にはなされた決議は無効であるべきである旨、判示した。

董事会の招集手続きおよび決議方法に関する主な会社法の規定

董事会の招集手続きおよび決議方法に関する規定として、第202条(決議事項)、第203条(招集権者)、第204条(招集通知)、第206条(決議要件)などがあるが、日系企業の場合、日本に居住する者が董事に選任されることも多いため、特に第205条の規定に気をつける必要がある。

205条の規定に注意を

会社法第205条

  1. 董事会を開催する際、董事は自ら出席しなければならない。ただし、会社定款に他の董事が代理できるという定めがある場合は、この限りでない
  2. 董事会を開催する際、それがテレビ会議で行われ、特定の董事がテレビを通じて会議に参加する場合、自ら出席するものと見なされる
  3. 董事が、他の董事に董事会への代理出席を委任する場合、毎回、招集事由の授権範囲を列記した委任状を作成しなければならない
  4. 前項の代理人は、一人の委任のみを受けることができる
  5. 董事が外国に居住する場合、国内に居住する他の株主に書面により委任し、常時董事会に代理出席させることができる
  6. 前項の代理は、主管機関に登記を申請しなければならず、変更時も同様とする

この他、株式の公開発行会社については、「公開発行会社の董事会の議事に関する規則」が適用される。董事長がなした法律行為が無効であると判断されるのを避けるため、董事会の招集手続きおよび決議方法が関連法令に適合するよう慎重を期すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。