第210回 台湾における契約の解釈

民法第98条には、「意思表示の解釈においては、文言の字義通りの意味に拘泥してはならず、当事者の真意を追求しなければならない」旨の規定がある。

2017年8月22日、上記規定に関連する高等法院民事判決(民国106年度上字第207号)が下された。判決の概要は以下の通りである。

「当事者の契約の解釈は、当事者が契約した当時の真意を基準とし、真意がどこにあるのかについては、過去の事実およびその他一切の証拠資料を判断の基準としなければならず、文字に拘泥しあるいは真意が失われるよう契約の中の1~2語を切り取ってはならない」

当該判決の内容は、これまでの最高法院の判断(民国39年台上字第1053号など)を踏襲したものである。

また、契約の解釈に関する判断として、最高法院民事判決(民国99年台上字第1421号)がある。判決の概要は以下の通りである。

「契約全文を通して見て、契約締結当時および過去の事実、取引上の習慣などその他一切の証拠資料を斟酌(しんしゃく)し、経験法則および信義誠実の原則を用いて、契約の主要目的および経済価値から全体の観察を行うことをもって判断の基礎とする」

さらに、法律行為の解釈をする際の基準および優先順位を示したものとして、民国88年台上字第1671号最高法院民事判決がある。判決の概要は以下の通りである。

「法律行為の解釈方法に関して、当事者が達成しようとする目的、習慣、任意法規および信義誠実の原則を基準とし、合理的にこれを解釈すべきである。その中で、目的を最優先とし、その次が習慣、その次が任意法規、信義誠実の原則は始終それらの間にあり、これを修正または補足する」

このように、裁判所においては、契約書の一部の記載内容のみをもって契約を解釈するのではなく、契約全文を見た上で、一切の証拠資料に基づき、契約目的に沿うような解釈がなされる。そのため、契約締結の際には、条項ごとの内容確認のみならず、それを全体として見たときに、意図する解釈が導き出されるかという視点も重要になる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。