第219回 食品等を通信取引する場合に普通取引約款に記載すべき事項

消費者保護法第17条の規定に基づき、衛生福利部(衛福部)が2014年9月5日に公布(15年1月1日施行)した「食品または飲食サービス等通信販売普通取引約款に記載すべき、および記載してはならない事項」という法規の名称が、17年12月25日に「通信取引方式によって締結する食品または飲食サービス普通取引約款に記載すべき、および記載してはならない事項」に変更され、その内容も一部改正された(即日施行、衛授食字第1061303394号公告)。

法規の名称が「通信販売」から「通信取引方式」に変更されたのは、消費者保護法第2条第10号の規定に適合させるためであり、適用範囲が拡大されるわけではない。

普通取引約款に記載すべき事項についての主な改正点

1.消費者の通信手段および申立受理方式

消費者がより企業経営者に連絡する手段として、「企業経営者の電話もしくは電子メール等『消費者が迅速有効に連絡できる通信手段』と消費者の申し立て受理の方式」を明記することとなった。

2.商品内容物の重量、容量の標示

国際化政策に適合するよう「正味の重量、容量はメートル法単位またはその通用する記号により、これを標示する」との規定が、「正味の重量、容量は法定の度量衡単位またはその略号により、これを標示する」に改正され、重量および容量の標示は法定の単位または略号を用いなければならないとされた。

この点、経済部によると、台湾の法定度量衡単位はメートル法単位である(経商三字第10302265840号)。

3.契約の履行および確認手順

「消費者は、企業経営者が提供する商品数量および価格を確認する手順に基づき、注文に進む」とされていた点が、「企業経営者は、消費者が契約を締結する前に、商品の種類、数量、価格およびその他重要事項の確認手順を提供しなければならない」と改正され、さらに、「契約の成立後、確実に契約を履行しなければならない」との規定が設けられた。

普通取引約款に記載する必要がなくなった事項

1.通信販売消費者の解約権

消費者保護法第19条第1項および第19条の2第1項において同内容の規定があるため、削除された。

2.解約時の返金規定

消費者保護法第19条の2第2項において同内容の規定があるため、削除された。

3.業者の秘密保持義務

従来の規定では、企業経営者は、「消費者の書面による同意」がなければ、消費者の個人情報を対外的に開示し、または契約の目的の範囲外で利用してはならないとされており、「消費者の書面による同意」があれば、開示や目的外利用が無制限に許されていた。

しかし、個人情報保護法第20条第1項各号では、企業経営者が、消費者の個人情報を特定の目的外で利用できる場合は限定列挙されており、たとえ「書面による同意」があっても、限定列挙された場合以外は利用できないと解される。

そこで、個人情報保護法第20条第1項の規定を蝉脱するのを避けるため、従来の規定が削除された。

普通取引約款に記載してはならない事項

普通取引約款に記載してはならない事項の第2点について、「別に法律に規定がある他、消費者個人情報を契約目的の範囲外で利用することを約定してはならない」との規定のうち、「利用することを約定してはならない」の部分が「利用してはならない」というように改正されたものの、当該事項を普通取引約款に記載してはならないことに変わりはない。

なお、その他の事項については改正されていない。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。