第248回 広告行為における不正競争

台湾の公正取引法第25条に「本法に別段の定めがあるもの以外、事業者はその他取引秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔(ぎもう)または明らかに公正を失する行為もしてはならない」とある規定は包括条項であり、不正競争によって市場秩序を破壊する一切の行為を防止するものです。同法第42条は違反した場合、5万台湾元(約18万円)以上2,500万元以下の過料に処すると規定しています。

今年7月下旬に台湾の通信キャリア最大手の中華電信が、競合の台湾大哥大(台湾モバイル)の事業名をキーワード広告として使用し、「台湾大哥大の第4世代移動通信(4G)を申し込めば、毎週抽選で約4,000名様に、賞品総額1,000万元超が当たる」といった内容を表示し、相手方の顧客によるクリックを集めましたが、表示された内容は中華電信のイベントでした。

過料20万元を課徴

公平交易委員会(公平会、公取委に相当)は「この行為は競合が市場においてサービスを普及させるために長年投入してきた努力を利用して、『台湾大哥大』に関する情報を検索しようとしたインターネット利用者のアクセスを集めたものである。当該キーワード広告は、競合の営業の表徴とリンクさせることによってキーワード広告のクリックを集め、自らの取引機会を増やし、さらに当該販促活動を行っていない競合先がこうした広告によって消費者から誤解を受けることとなっている。これは取引秩序に影響を及ぼすに足りる上、公正を失している。また、中華電信は誤記であると示したが、行為者の故意であるか、過失であるかにかかわらず、同条の規定に違反している。しかしながら、中華電信は2日で削除したため、過料20万元のみを科す」との判断を示した。

以上をまとめると、台湾で商品またはサービスについて宣伝を行う場合、化粧品、医薬品の関連分野では誇張や不実があってはならないことに特に注意しなければなりませんが、他の分野の商品またはサービスであっても、不正競争を生じさせる可能性はないか否かに注意しなければなりません。違法となることを避ける観点から、まず現地の弁護士にリスク評価を依頼することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。