第253回 台湾法上の地上権

いわゆる「地上権」は民法第832条で、「他者の土地の上下に建築物またはその他の工作物を有することを目的に、その土地を使用する権利」と規定されています。具体的には、例えば甲が乙の所有する土地Aの上に建物建設を希望したため、甲乙双方が交渉を通じて、土地Aに地上権を設定し、甲が借用、かつ地上権設定登記を行うことで地上権者になることを取り決めた、といったものです。

台湾の現行の法律制度では、他者の土地を利用して建物、工場などを建てたい場合、以下の2つの方法があります。

1.地主と賃貸借契約を締結し、当該土地を借用する

2.地上権を設定し、当該土地を借用する

存続期間に規定なし

2つの共通点は、いずれも地主に賃料を支払って土地の使用権を取得していることです。異なる点は以下の通りです。

1.地上権を取得する場合、効力発生には主管機関への登記が必要です。しかし、賃貸借契約は賃貸人と賃借人が締結しさえすれば有効となります。

2.地上権の存続期間について台湾法上に特別な規定はなく、70年間設定されたケースもあります。しかし、土地の賃貸借契約は最長でも20年を超えてはならないと規定されています。

3.地上権は譲渡可能で、抵当権設定の目的物とすることもできます。しかし、土地の賃貸借権は原則として譲与できず、転貸もできません。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。