第571回 兵役逃れの罰則

今月14日、台湾のタレント9人が偽の診断書で兵役を逃れたとして身柄を拘束されたニュースがありました(以下、「本件兵役逃れ」)。

兵役法(以下、「本法」といいます)第1条では、「中華民国の男子は法に基づき、皆、兵役に服する義務がある」旨が規定されています。そして、本法第3条第1項により、満18歳の翌年の1月1日から満36歳の年の12月31日までの期間が徴兵対象年齢とされています。徴兵対象年齢の男子は原則として徴兵されますが、以下のような例外が存在します。

第4条

次の各号の一に該当する者は、兵役を免除され、免役と称する。

(1)心身に障害または持病があり服役基準に達しない。

(2)身長、体重または体格の指標が高すぎ、または低すぎて、服役基準に適していない。

第5条

次の各号のいずれかに該当する者は、兵役に服することを禁止し、禁役と称する。

(1)5年以上の有期懲役に処せられたことがある。

(2)有期懲役の刑を執行された期間が合計満3年になる。

そして、本法第33条第1項第3号により、徴兵検査の結果、免役体格に分類された者は、兵役が免除されます。ニュース記事によると、本件兵役逃れは、血圧異常であると偽装する等して行われたようです。

5年以下の有期懲役

本件の兵役逃れのように、兵役逃れのために身体を傷つけたり、その他の方法で体格を変更した者は、兵役妨害処罰条例第3条により、5年以下の有期懲役に処されます。また、兵役逃れのために、不実であることを知っている書類を主務官庁に提出した場合も、同条例第13条第1項により、5年以下の有期懲役に処されます。さらに、虚偽の診断書を作成している場合には、刑法第210条の私文書偽造罪等が成立する可能性もあります。

台湾では、傷害罪(刑法第277条第1項)、窃盗罪(刑法第320条第1項)、詐欺罪(刑法第339条第1項)等の罪の法定刑は「5年以下の有期懲役」ですので、兵役逃れの罪は、これらの罪と同程度に重いと考えられているようです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。