第40回 他人物賃貸借について

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

夏、真っ盛りという感じの台湾ですが、ニュースで聞く気温などを見ていると日本の方が、気温が高かったりするんですよね。日本は、台湾よりだいぶ北に位置しますが、気温が南北の位置関係だけで決まるものはでないことがよく分かります。

全く話は変わりますが、マンゴーってウルシ科の植物だったって、皆さん、ご存知でしたか?私は、少し前に口の周りがカサカサして痛い時期があり、「もしかして最近食べたフルーツでかぶれたのかも」と思って、ネットで調べたところ、疑惑の存在としてマンゴーが浮かんできたんですね〜。私は子どものころ、山でよくかぶれていまして、もしかするとマンゴーでかぶれたのかもしれません。もちろん、マンゴーがウルシ科であることを知ってからも、あまり気にせず、時々はマンゴーをいただいておりますが。。。

さて、本日は、台湾人弁護士と話していて、「日本と違う!!」と思った、「他人物賃貸借」について書いてみます。
「他人物賃貸借」とは、読んだままの意味で、「他人の物を対象とする賃貸借」のことをいうのですが、日本でも台湾でも、法律上は有効とされています。自分が所有していない、他人所有の不動産だろうが、宝石だろうが、所有者でない者が貸し出しても法律上は無効ではないんです(ちなみに他人の物を売却する場合も同様に有効で、「他人物売買」といいます)。日本の民法では、「他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」という規定があり、同規定により、「他人の権利を売買の目的」とすること自体は有効と解されているんですね。そして、同規定は賃貸借契約にも準用されるので、「他人物賃貸借」も有効となります(つまり、違法ではない!!)。

台湾でも、民法において「売主は、売買の目的物には第三者が買主に対して執行できるいかなる権利も伴わないことを保証する。」と規定されていますが、他人の所有物を売買や賃貸借の目的物とすること自体は有効であると解されています(台湾でも、賃貸借契約には、基本的に売買契約が準用されます)。

このように「他人物賃貸借」が有効である点は、日本と台湾で同様なのですが、私が「日本と違う!!」と感じたのは、台湾では、不動産の「他人物賃貸借」、つまり、「真の所有者でない人から、不動産を賃貸借するケースが少なくない」という同僚の言葉でした。日本では、「他人物賃貸借」が法律上、有効であったとしても、通常、不動産を賃貸するような場面では、真の所有者から借りるのが当然の前提であり、「他人物賃貸借」となるケースはそれほど多くないと思われます。

しかし、台湾では、真の所有者の家族や友人などが、真の所有者の許しを受けたり、依頼を受けて大家となり、鍵や物件などもその大家が管理するとともに、実際の賃貸借契約についても、その大家が当事者となって締結するケースが少なくないそうです。日本人の感覚からするとにわかには信じがたいかもしれませんが、台湾人の同僚によれば、日本人の感覚に逆に「びっくり」と言われたので、本当に、台湾ではありえる話のようです。

日本人が台湾で不動産を借りる際には、日系の不動産仲介業者を介して行うことが多いでしょうから、賃貸借契約において、所有者でない方と契約を締結することはほぼないと思いますが、ローカルの不動産仲介業者などを使う場合には、真の所有者と賃貸借契約を締結することになっているか、契約の際にはしっかり確認してください。確認を怠って、真の所有者と賃貸借契約を結んでいない場合、真の所有者から物件の明け渡しを迫られれば、法律上は、明け渡さざるを得ないですからね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。