台湾の同性婚特別法の概要

台湾の立法院(国会)は、2019年5月17日の三読会で「司法院釈字第七四八号解釈施行法(一般的には『同性結婚特別法』といわれ、以下『本法』という)」を可決し、同年5月24日より正式に施行された。これにより、台湾は同性婚を合法化したアジアで最初の国となったため、本法は国際的に極めて大きな注目を集めている。

本法の重要な内容は次のとおりである。

一、同性婚の定義について:

本法第2条は「性別が同じ二人は、共同生活を営む目的で、親密性および排他性を有する永久的な夫婦関係を成立させることができるものとする。」と規定している。

二、同性婚成立における制限:

本法第3条第1項は「18歳未満の者は、第2条の関係を成立させることができないものとする。」と規定し、本法第5条第1項は「次の各号の性別が同じ親族は、第2条の関係を成立させることができないものとする。1、直系血族および直系姻族。2、四親等以内の傍系血族。ただし、養子縁組によって成立した四親等の傍系血族で同世代の者についてはこの限りでない。3、五親等以内の傍系姻族で同世代ではない者。」と規定し、さらに、本法第7条第1項は「配偶者がいる者または第2条の関係をすでに成立させている者は、第2条の関係をさらに成立させることができないものとする。」と規定している。

三、同性婚における離婚について:

本法第17条第1項は「第2条の関係にある当事者双方の一方が次の各号の事由のいずれかに該当する場合、他方は裁判所に対し第2条の関係を終了させることを請求できるものとする。1、他の者と重ねて民法に定められる結婚をした、または第2条の関係を成立させたとき。2、第2条の関係にある他方以外の者と和姦したとき。3、第2条の関係にある一方が他方に対して同居するに堪えない虐待をしたとき。4、第2条の関係にある一方が他方の直系親族に対して虐待をした、または第2条の関係にある一方の直系親族が他方に対して虐待をしたことにより、共同生活をするに堪えなくなったとき。5、第2条の関係にある一方が悪意をもって他方を遺棄し、継続状態にあるとき。6、第2条の関係にある一方が他方を殺害することを企図したとき。7、重大な不治の病にかかったとき。8、生死不明となってから三年を経過したとき。9、故意の犯罪により、六か月超の有期懲役の実刑判決が確定したとき。」と規定している。

四、同性婚における養子縁組:

本法第20条の規定によると、同性婚を成立させた双方は、他方の実子を養子にすることができるものとするが、双方と血縁関係のない者を養子にすることはできないものとされている。

五、同性婚の継続について:

本法第23条の規定によると、同性婚を成立させた双方は互いに法定相続人となり、相続の順位は異性間の結婚における配偶者と同じとされている。

メディアの報道によると、本法の施行以来、台湾では現時点ですでに500組を超える同性カップルが同性婚の登記を完了している。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修