飲酒運転の法的責任

最近、少し変わった飲酒運転事件がありました。

マスコミの報道によれば、ある夫婦は、今年(2019)10月、車を運転して台中に行き、友人と一緒に酒を飲みましたが、「飲酒後は車を運転してはならない」という認識があったので、夫が自費で代行運転者を呼んで運転させ、夫婦を宿泊するホテルまで送らせました。しかし、代行運転者が帰った後、夫は車の停め方がひどく曲がっているのが気になり、乗車して位置を調整しました。思いがけないことに、この時、警察が臨時検査に来ており、夫は全身から酒の匂いがしていたため、警察は夫に対し罰金通知書を発行し、飲酒運転の刑事責任を追及しました。

台湾において、飲酒運転により生じる法的責任は主に以下の2種類になります。

一、行政責任:道路交通管理処罰条例第35条第1項により、自動車の運転者が検査の結果、その呼気に含まれるアルコール濃度が1リットルあたり0.15ミリグラムに達する場合又は血液中のアルコール濃度が0.03パーセント以上に達する場合、1万5000台湾元以上9万台湾元以下の過料に処され、かつその場で当該自動車を移動保管された上その運転免許証を1年間取り上げられます。

同条第4項により、警察の指示に従って停車して取り締まりを受けず又はアルコール検査を受けるのを拒否した自動車運転者は、9万台湾元の過料に処され、かつその場で当該自動車を移動保管され、当該運転免許証を取り上げられた上道路交通安全講習を受けさせられます。

なお、同条第6項により、自動車の所有者が、自動車運転者のアルコール濃度が規定の標準を超過していることを明らかに知っている状況において、運転することを禁止しなかった場合、1万5000台湾元以上9万台湾元以下の過料に処され、かつ当該自動車のナンバープレートを3ヵ月間取り上げられます。

二、刑事責任:刑法第185条の3第1項第1号により、動力付きの乗物を運転する場合において、呼気に含まれるアルコール濃度が1リットルあたり0.25ミリグラムに達するとき又は血液中のアルコール濃度が0.05パーセント以上に達するときは、2年以下の懲役に処され、また20万台湾元以下の罰金を併科することができるとされています。

実務上、飲酒運転罪の初犯で、かつ犯罪を認めている運転者(被告)に対して、検察官は通常、運転者が以下の基準による罰金を納付することで、起訴の猶予処分を与えています。

(1)アルコール測定値が1リットルあたり0.15から0.35ミリグラムの場合、2.5万台湾元から4.5万台湾元。
(2)アルコール測定値が1リットルあたり0.35から0.55ミリグラムの場合、5万台湾元から7万台湾元。
(3)アルコール測定値が1リットルあたり0.55から0.75ミリグラムの場合、7.5万台湾元から9.5万台湾元。
(4)アルコール測定値が1リットルあたり0.75から0.95ミリグラムの場合、10万台湾元から12万台湾元。
(5)アルコール測定値が1リットルあたり0.95から1.1ミリグラムの場合、12.5万台湾元から14万台湾元。
(6)アルコール測定値が1リットルあたり1.1ミリグラム以上の場合、14.5万台湾元以上。

台湾において、飲酒運転の法的責任はかなり重いため、飲酒後は車の運転を絶対にしないようご注意下さい。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修