台湾法における「物の担保責任」

台湾法における「物の担保責任」とは、商品の売主が、買主への当該商品引渡し時に当該商品に双方が約定した品質などに適合しない瑕疵が存在しないことを必ず担保しなければならないことを指し、瑕疵が存在する場合、買主は売主に対し契約解除、代金の減額または損害賠償請求を主張することができる。

物の担保責任の主な法的根拠は以下のとおりである。

民法第354条第1項:

物の売主は買主に対し、その物につき第373条の規定に基づき危険が買主に移転する時(商品の引渡し時を指す)においてその価値が滅失または減少する瑕疵がなく、その通常の効用または契約にあらかじめ定めた効用が滅失または減少する瑕疵もないことを担保しなければならない。

同法第359条:

売買において、物に瑕疵があるために売主が前五条の規定に基づき担保責任を負わなければならない場合、買主は、その契約を解除しまたはその代金の減額を請求することができる。ただし、状況からして、契約を解除することが明らかに公平性を欠く場合、買主は代金の減額請求しかすることができない。

同法第360条:

売買する物に、売主が保証した品質が欠けている場合、買主は、契約の解除または代金の減額請求をせずに不履行による損害賠償を請求することができ、売主が物の瑕疵を故意に告知しない場合も同様とする。

実務上、物の担保責任は不動産取引においてしばしば適用される。例えば、甲が乙から家屋を購入し入居した後、当該家屋にひどい漏水がありまたは当該家屋で過去に殺人事件が発生したことが判明した場合、甲は乙に対し、売買契約の解除または代金の減額を主張することができる。乙が甲に対し当該家屋に漏水または殺人事件が絶対にないことを保証していた場合には、甲はさらに、乙に損害賠償請求をすることができる。

但し、物の担保責任について、買主が売主に対し行使できる権利は永久のものではなく、民法第365条によれば、買主が物に瑕疵があるために契約の解除または代金の減額請求をすることができる場合において、その解除権または請求権は、商品に瑕疵があることを買主が売主に通知してから6ヵ月以内に行使しない場合にまたは商品の引渡しから5年が経過した時に消滅する。

なお、民法における物の瑕疵担保責任は強行規定ではなく、当事者の特約により軽減しまたは重くすることが可能である。そのため、売買契約を締結する前に、自社が売主か買主かに応じて、最も有利な担保条件を設定すべく、慎重に検討すべきと考える。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修