第322回 賃貸借関係における家主の修繕義務

 日本料理は台湾人に受け入れられており、多くの日本の飲食業者が台湾で店舗を賃借し、レストランを経営しています。もし日本人が賃借する店舗で水漏れなどの問題が発生した場合、修理をするのは家主でしょうか、借家人でしょうか。台湾の民法に次の規定があります。

第423条:「賃貸人は、賃貸借の目的物を約定した使用収益に適する状態で賃借人に引き渡さなければならず、また、賃貸借関係の存続中において、当該賃貸借の目的物を約定した使用、収益に適する状態に維持しなければならない。」

第429条:(第1項)賃貸借の目的物の修繕は、契約に別段の定めがある場合、または別の慣習がある場合を除き、賃貸人が負担する。(第2項)賃借人は、賃貸人が賃貸借の目的物の保存に必要な行為を拒むことができない。」

第430条:「賃貸借関係の存続中において、賃貸借の目的物に修繕の必要が生じ、賃貸人が負担すべき場合、賃借人は相当の期間を定め、修繕するよう賃貸人に催告できる。賃貸人が期間内に修繕を行わないとき、賃借人は契約を終了させるか、または自ら修繕し、その費用の償還を賃貸人に請求するか、その費用を賃料から控除できる。」

 例えば、日本の飲食業者甲が台湾人乙から店舗Aを賃借してレストランを開設し、一定期間経過後に壁に水漏れが発生し、営業に支障が出た場合、上記の規定によれば、甲は一定の期間を定めて水漏れした壁を修理するよう乙に要求できます。乙が期間内に水漏れの問題を解決しなかったとき、甲は賃貸借契約を終了させるか、甲が自ら修理し、その修理費用の償還を乙に請求するか、修理費用を賃料から控除することができます。

特約条項に注意

 上記民法における賃貸人にとって不利益な修繕規定は強行規定ではなく、当事者における特約を通じて除外できます。

 実務においては、自己の責任を大幅に軽減させるために賃貸借契約に特約条項(例えば「賃借人は、引っ越し時において本店舖に問題がなく、引っ越し後に水漏れ等の問題が発生した場合には、全て賃借人が自ら修理することを確認する。」)を加える家主は少なくありません。

 日本の業者が台湾で店舗などの不動産を賃借するに当たっては、必ず賃貸借契約の内容が合理的なものであるか法律の専門家に確認してから契約の締結を行ってください。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。