「大同社」における市場派株主による臨時株主総会の招集

台湾全土の大きな注目を集めた「大同社」事件について、経済部は8月12日、大同社の「市場派株主」が会社法第173条第4項の規定に基づき同社の臨時株主総会を招集することを承認したと発表しました。

 大同社は1918年に設立され、電子用品の製造を主な業務とする台湾の有名な上場会社です。近年、大同社は業績不振に陥り、また、「華映」、「縁能」、「尚志半導体」などの大同社の子会社または関連企業も深刻な赤字により次々と上場廃止となっていました。しかし、大同社は台湾で成功した時期が非常に早く、台湾全土に35万坪超と言われる土地資産を有しており、また、大同社の店舗が各県・区の一等地に多く所在することから、各方面の勢力が大同社の経営権争奪に介入する事態を引き起こしていました。

 今年6月30日、大同社は董事9名(3名の独立董事を含む)を全面的に改選するつもりで株主総会を開催しましたが、大同社の董事長を長とする少数株主(いわゆる「会社派株主」)は、「企業合併・買収法」第27条第14項(合併・買収の目的で、本法の規定に基づきいずれかの公開発行会社の発行済株式の総額の100分の10を超える株式を取得する場合、取得後10日以内に、証券主管機関に対しその合併・買収の目的および証券主管機関が定める申告すべき事項を申告しなければならない。申告事項に変更がある場合、その都度補正しなければならない)および第15項(前項の規定に違反して公開発行会社の発行済の議決権付き株式を取得した場合、その超過部分について議決権はないものとする)の規定を引用し、いわゆる市場派株主が大同社の株式を取得した際に主管機関に申告していないことを理由に、市場派株主の議決権(株式全体の約53%を占める)を強行排除し、会社派株主が推薦する全ての董事を当選させました。

 市場派株主はこれを受け入れず、会社派株主が違法に決議したと主張し、間を置かずして7月9日に、会社法第173条第4項(董事の株式譲渡またはその他の理由により、董事会が株主総会を招集しないまたは招集することができない場合、発行済株式総数の100分の3以上の株式を保有する株主は、主管機関に申請し、その許可を得た上で、自ら招集することができる)に基づき、大同社の臨時株主総会を自ら招集開催することを経済部に申請し、経済部の承認を得ました。

 臨時株主総会は、今後開催される予定ですが、本件に関しましては、企業合併・買収法及び会社法の解釈に関する紛争が今後も生じる可能性があり、その帰趨が注目されます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修