台湾における非正規雇用労働者の労働契約

行政院(日本の内閣に相当)が公表している2024年度人的資源運用調査統計結果(中国語:113年人力運用調查統計結果)によると、台湾における非正規雇用労働者、言い換えれば有期雇用契約を締結している労働者は、総就業人口1,158万人のうち80.4万人と、全体の6.95%を占めるに過ぎません。

これに対して日本の非正規雇用労働者は、総就業人口6,770万人のうち2,151万人であり、約30%を占めています(2025年3月労働力調査)。このように、台湾では日本と比べて圧倒的に正規雇用労働者が多いことがわかります。今回は、台湾における非正規雇用労働者が締結している労働契約の特徴について説明します。

台湾労働基準法第9条1項は、以下のとおり規定しています。

労働契約は、有期契約(中国語:定期契約)及び無期契約(中国語:不定期契約)に分けられる。臨時的、短期的、季節的及び特定の労働については、有期契約とすることができる。また、継続性のある労働は、無期契約としなければならない。派遣元が派遣労働者と締結する労働契約については、無期契約としなければならない。

以上のとおり、台湾では無期契約が原則とされており、①臨時的、②短期的、③季節的④特定の労働という一定の条件を充足した場合に限り、例外的に有期契約とすることが認められています。①ないし④の認定方法は以下のとおりです。

①臨時的業務(労働基準法施行規則第6条1号)

「臨時的業務」とは、天災が生じたことにより突発的に人手を要する場合など、需要を予期することができない非継続的業務であって、その作業期間が6か月以内のものである場合を指します。

②短期的業務(労働基準法施行規則第6条2号)

「短期的業務」とは、6か月以内に業務の完成を予期できる非継続的業務を指します。

③季節的業務(労働基準法施行規則第6条3号)

「季節的業務」とは、原料、材料の供給源または市場が季節的な影響を受ける非継続的業務であって、業務期間が9か月以内である場合を指します。

④特定の業務(労働基準法施行規則第6条4号)

「特定の業務」とは、特定期間内に完成することができる非継続的業務を指します。当該業務期間が1年を超える場合には別途、管轄官庁への届出が必要となります。

なお、上記①臨時的業務及び②短期的業務については、⑴労働者が業務を継続し、かつ、雇用者が直ちに反対の意思を示さなかった場合、または、⑵別途新たに契約を締結しており、契約上の雇用期間が新契約及び旧契約を合わせて90日を超え、これら契約の中断期間が30日を超えない場合(言い換えれば、新契約が旧契約の契約期間満了日から90日以内に締結された場合)には、無期契約とみなされてしまうため、注意を要します(労働基準法第9条2項、3項)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修 弁護士 秋口麻貴