企業内でセクハラ疑義事案が生じてしまった場合の対応について
台湾では、職場においてセクハラ疑義事案が生じた場合における、使用者が採るべき行動が関連法令及びガイドラインで定められています。当該規定内容には、期間制限や罰則などもあるため、使用者としては押さえておきたいポイントです。今回は、社内体制・運用の見直しの参考としていただけるよう、その事案処理の概要をご紹介いたします。
1.関連法令等についてのご紹介
セクハラ規制に関する法令には、⑴職業安全衛生法(中国語:職業安全衛生法)、⑵性別平等就業法(中国語:性別平等工作法/日本法上の男女雇用機会均等法に相当)、⑶性別平等就業法施行細則(中国語:性別平等工作法施行細則)、⑷職場におけるセクシュアルハラスメント防止措置準則(中国語:工作場所性騷擾防治措施準則)があります。加えて、これら法令を基に、使用者または労働者がどのように動くべきかについて定めた、⑸職場におけるセクシュアルハラスメント申立て処理指導マニュアル(中国語:職場性騷擾申訴處理指導手冊)がガイドラインとして存在しています。
このため使用者の皆様においては、「⑸職場におけるセクシュアルハラスメント申立て処理指導マニュアル」記載内容を徹底いただき、もっと詳細が知りたい場合や、判然としない部分がある場合には、上記⑴ないし⑷の法令を参照するか、弁護士等の専門家にご相談いただくといった流れになることが想定されます。
2.セクハラ疑義事案が生じてしまった場合に使用者が辿るべきルート
被害者からセクハラに関する申立て等があり、使用者が当該事実を覚知した場合には、初動として、当該申立てを受けた旨を地方主管機関に通知(いわゆる「速報」)する必要があります(①)。その後、企業内で申立委員会において当該事案の調査を行い(②)、調査内容に基づき、当該事案がセクハラに該当するのか、該当する場合には、加害者に対しどのような処罰を行うべきかについて審議し(③)、決議する(④)必要があります。決議内容は、申立人(被害者)及び被申立人(加害容疑者)に対し書面で通知を行う必要があります(⑤)。法令上、上記の「①主管機関への通知→②調査→③審議→④決議→⑤当事者への書面通知」の流れを原則として2か月で行わなければならないとされており、スピード感が求められます(なお、必要である場合には当事者に通知することで1か月ずつ延長することも可能です)。
そして、セクハラ事案が成立すると判断した場合には、被申立人に対する処罰を。セクハラ事案が成立しないと判断した場合であって、かつ先行して被申立人に対し処罰を行っていた場合には、法定されている救済措置を被申立人に対し行う必要があります。これらが終了した場合には、一連の結果を申立人の労務提供地の主管機関に通知(いわゆる「確報」)します。これをもって、使用者として行うべき処理は完了です。
3.使用者として行い得る法的リスク回避方法
なお、企業においては、セクハラに関する定期的な社員研修の実施や、セクハラ防止策の制定などが法律上義務付けられています。これら法定されている義務をしっかりと履行しておくことで、セクハラ事案が生じてしまい、万一訴訟の段階に進んでしまった場合であっても、企業として身を守ることが可能です。また、セクハラ事案が成立してしまった場合に、スムーズに当該社員に適切な処分をできるよう、就業規則や労働契約の内容を再チェックしておくことも有用です。今回を機に専門家のアドバイスも受けながら万一の場合に備えた準備を行っていただくことをお勧めいたします。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】
