台湾における最低賃金の取扱いについて
4大経営資源である、ヒト・モノ・カネ・情報のうち「カネ」に関するお話です。台湾では、最低賃金が時間単位・月単位で定められています。日本と異なり、最低賃金が台湾域内で統一されているのも特徴の1つです。
1.2026年の最低賃金
2026年1月1日からの台湾における月額最低賃金は、29,500台湾元となっています。昨年の月額最低賃金28,590台湾元から910台湾元、率にして3.18%の大幅な引き上げとなっています。また、時間額最低賃金についても、月額最低賃金と同様の引き上げ率により、190台湾元から196台湾元へと調整されました。台湾では、2016年から2026年にかけて、10年連続で最低賃金が引き上げられており、月額最低賃金は47.4%、時間額最低賃金に至っては63.3%の上昇率となっています。
2.最低賃金とは
労働基準法(中国語:勞動基準法)第21条では、「賃金は、労使双方の合意により定めるものとする。ただし、基本賃金(中国語:基本工資)を下回ってはならない。」と定められています。
2024年1月1日、最低賃金法(中国語:「最低工資法」)が制定されたことに伴い、「基本賃金」は、「最低賃金」(中国語:「最低工資」)に置き換えられました。また、最低賃金法第5条でも新たに、「労働者と使用者双方が合意して定める賃金は、最低賃金を下回ってはならない」と定められ、かつ、「合意された賃金が最低賃金を下回る場合には、同法に定める最低賃金額をもってその賃金額」とすることが明確に規定されました。
「最低賃金」とは、労働者が「通常の労働時間」内において得る報酬を指します。このため、①時間外労働の賃金や、②所定休日(中国語:休息日)、法定休日(中国語:例假)、および祝日(中国語:國定假日)における労働に対する割増賃金は含まれません。
3.労働者が、私用による休暇を取得した場合の取扱い
「労働者の月給が、最低賃金ちょうどであるにもかかわらず、労働者が私用による休暇(中国語:「事假」)を取得した場合、賃金控除は可能か」というご質問をいただくことがあります。
答えは、「控除できる」です。労働者が私用による休暇を取得した場合、当該時間については労務を提供していないこととなります。このため、「実際の労働時間」に基づいて賃金を支給しているのであれば、労動基準法に違反しないとして、労働部(*日本の厚生労働省に相当)の見解が明確に示されています。
したがってこの場合における、「労働者が通常の労働時間内において受領する月額賃金」は、①月額最低賃金から、②休暇を取得したために支給しなかった日額最低賃金を控除した残額を下回ってはいけないこととなります。
毎年の改定動向を踏まえつつ、自社の賃金設計や運用が適法か否か、継続的かつ定期的に見直すことで、賃金未払い等のリスクを低減させることが可能な場合もあります。法務・税務の専門家のアドバイスを踏まえながら、適切な対応を講じていくことが重要です。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】
