「職務著作」に関する台湾著作権法の規定

台湾著作権法の第11条及び第12条は、雇用、委任等の職務によりなされた著作の「著作者」、「著作者人格権」及び「著作財産権」の規定に関する条項である。第11条は主として、雇用者・被雇用者間の関係における、職務によりなされた著作に関する規定であり、第12条は委任関係において生み出された、又は職務によりなされた著作に関する規定であると考えられている。
職務によりなされた著作の「著作者」、「著作者人格権」及び「著作財産権」に関する第11条及び第12条について、以下に説明する。

1. 「著作者」及び「著作者人格権」について

台湾著作権法第11条によれば、被雇用者が職務においてなした著作については、原則として、当該被雇用者が著作者となるが、契約で定めることにより雇用者を著作者とすることができる。雇用者と被雇用者との間に特段の定めがなければ、被雇用者が職務においてなした著作の著作者人格権を有する。契約で雇用者を著作者と定めた場合、雇用者が著作者人格権を有する。
第12条によれば、受任者が委任契約に基づきなした著作については、当該受任者が著作者となるが、契約で定めることにより委任者を著作者とすることができる。委任者と受任者との間に特段の定めがなければ、受任者が職務においてなした著作の著作者人格権を有する。契約で委任者を著作者と定めた場合、委任者が著作者人格権を有する。

2.「著作財産権」について

台湾著作権法第11条によれば、被雇用者が著作者である場合、当該職務においてなされた著作を雇用者が利用できることを保障するため、原則として、著作財産権は雇用者に帰属する。つまり、被雇用者は著作者であるにもかかわらず、著作財産権を享有しないことになる。但し、契約で定めることにより、著作者である被雇用者に著作財産権を享有させることもできる。

雇用者と被雇用者との間に特段の定めがない場合、雇用者が著作財産権を享有することになる。また、雇用者が著作者であると定めた場合も、著作財産権は当該雇用者に帰属し、被雇用者は著作財産権を享有しない。

台湾著作権法第12条によれば、受任者が著作者である場合であっても、著作財産権が必ず委任者に帰属するとは限らない。この場合の著作財産権については、契約の定めに従い、受任者又は委任者が享有することになる。このような規定の背景には、通常、委任により受任者が著作をなした場合、委任者と受任者の地位は比較的平等であり、被雇用者・雇用者間の従属関係とは異なるという考え方がある。

受任者が著作者であり、かつ委任者及び受任者の双方が著作財産権の帰属について約定していない場合、当該著作財産権は受任者に帰属する。しかし、委任者が当該著作を利用できることを保障するため、第12条では、著作財産権が受任者に帰属する場合、委任者は「当該著作を利用することができる」と規定している。

委任者が著作者であると約定する場合、著作財産権は委任者に帰属し、受任者は著作財産権を享有しない。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修