公平取引法に違反する可能性がある警告書の不当発送行為について

台湾の行政院公平取引委員会(以下「公平会」という)は9月16日に公処字第100170号処分書を作成し、食品会社A社による警告書の発送行為に対して、直ちに停止し、5万台湾ドルの罰金を科すという処分を下した。また、公平会はA社の警告書発送行為が競争相手であるB社の商品の販売を停止させるまでには至らないが、当該警告書発送行為は公平取引法24条に違反していると認定した。

上記ケースにおいて、A社とB社はともに食品会社であり、量販店、スーパーマーケットなどを主要ルートとして商品を販売しており、且つそれぞれ登録済の商標をもって、営業活動を行なっていた。A社はB社のある商品がA社の商標権を侵害していると判断したため、商標権の侵害について言及した警告書をB社及びB社の顧客(量販店、スーパーマーケットなど)に発送していた。

事業者が他の事業者に警告書を発送する場合に適用される規定は、台湾の公平取引法及び台湾行政院公平取引委員会が2010年1月28日に公布した「事業者の著作権、商標権又は特許権侵害に対する警告書案件に関する処理原則」である。

上記処理原則の2.(用語の定義及び適用対象)によれば、「本処理原則における事業者が警告書を送る行為とは、事業者が下記の方式で自己の又は他の事業者の取引相手又は潜在的取引相手に対して、他の事業者が自己の所有する著作権、商標権又は特許権を侵害しているとの通知を流布する行為を指す。(1) 警告書(2)通告書(3)弁護士書簡(4)公開書簡(5)告知広告(6)その他、自己又は他の事業者の取引相手又は潜在的取引相手に知らせるに足る書面」と規定されている。

同処理原則の3(著作権法、商標法又は特許法に基づく権利行使の正当な行為−1)によれば、「事業者が下記の権利侵害確認手続きの1つを行った後、警告書を送るときは、著作権法、商標法又は特許法に基づく権利行使の正当な行為とする。

(1) 裁判所の一審で、著作権、商標権又は特許権が侵害されているという判決が下された場合。(2) 著作権の審議及び調停委員会の調停で、著作権の侵害が認定された場合。(3) 特許権を侵害している可能性がある対象物について専門の機関に鑑定を依頼し、特許権を侵害している旨の鑑定報告を取得し、且つ警告書等の送付前又は同時に、侵害の可能性がある製造業者、輸入業者又は代理店に通知し、侵害排除を請求した場合。」と規定されている。

上記処理原則の法的効力について、同処理原則の5.(法律効果)によれば、事業者が先行手続きを行わず、いきなり警告書を送り、且つ取引に影響する欺瞞又は明らかに公平を失する行為であると認めるに足るときは、公平取引法24条 (注1参照)に違反するとされている。

これは、いずれの権利侵害確認手続きも行なわずに、著作権、商標権又は特許権の侵害が存在しているかどうかが不明であるにもかかわらず、競争相手及び競争相手の取引相手に当該競争相手が自己の所有する著作権、商標権又は特許権を侵害しているとの通知を流布する行為は、関係者に競争相手が権利侵害を行っている可能性があると連想させることから、明らかに不公平な競争をもたらすためである。

このため、上記ケースにおいて、A社の警告書発送行為により、B社の商品の販売が実質的に影響されているかどうかにかかわらず、公平会はA社が公平取引法24条に違反していると認定し、罰金を科した。


(注1)台湾公平取引法24条:「本法は別に規定している場合を除き、事業者は他の取引秩序に影響を及ぼすに足る欺瞞的又は明白な不公正な行為をしてはならない。」


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修