法人株主による取締役、監査役派遣の制限

最高裁判所は2015年1月8日2015年度台上字第35号において、ある法人と、その法人の完全子会社がともに、別の会社の法人株主である場合、親会社の代表者が取締役、子会社の代表者が監査役に選任されることは、会社法第27条第2項により制限されるべきであると判断した。

本件紛争の概要は次のとおりである。

  1. A社及びB社はいずれもC社の法人株主であり、また、B社はA社の完全子会社であった。C社は2013年、株主総会を開催し、取締役及び監査役を改選し、A社の代表者である甲がC社の取締役に選任され、B社の代表者である乙がC社の監査役に選任された。
  2. 当該株主総会で取締役に選任されなかった別の株主である丙は、A社及びB社は別個の独立した会社であるとはいえ、B社はA社の完全子会社であることから、甲及び乙がそれぞれC社の取締役、監査役に選任されたことは、C社の取締役及び監査役がいずれも、A社から派遣されたも同然であり、法人株主の複数の代表者は取締役及び監査役に同時に選任されることはできないと規定する、会社法第27条第2項に実質的に違反していると考えた。※会社法第27条第2項:
    政府又は法人が株主である場合、その代表者は取締役又は監査役に選任されることもできる。代表者が複数いる場合、それぞれ選任されることができる。
但し、取締役及び監査役について同時に選任され又は担当してはならない。
    そこで、丙は、甲及び乙の選任は無効であると主張するとともに、Cと甲及び乙との間に委任関係が存在していないことの確認を求める訴訟を提起した。

一審では丙の請求が認められたが、二審では、会社法第27条第2項の制限に、取締役及び監査役がそれぞれ親会社及び子会社から派遣されるケースは含まれないと判断され、丙の請求は退けられた。

最高裁判所は、原判決を覆し、法人株主とその完全子会社である法人株主の二つの法人は、形式的には独立して存在しているとはいえ、後者が前者によって完全にコントロールされていることから、当該二つの法人がそれぞれ取締役及び監査役を派遣したとしても、実質的には双方とも親会社が派遣したことになるため、同一の法人の複数の代表者が同時に選任されたも同然であり、会社法第27条第2項違反に当たると判断した。

もっとも、最高裁判所は、本件における甲及び乙の選任がいずれも無効であると判断したわけではなく、証券取引法の規定を類推適用し、乙の監査役当選のみを無効とすべきであると判断している。

法人株主から取締役及び監査役を派遣する際には、本件と同様の取り扱いをしている企業も多いと考えられるが、近時、最高裁判所がこのような判断を行った以上、会社法第27条第2項については慎重に判断する必要があるものと考える。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修